「国家安全法」の背後にちらつく中国の脆弱さ 揺らぐ共産党一党支配、危機感ゆえの強硬策

東洋経済オンライン / 2020年6月3日 7時10分

中国が導入しようとしている「国家安全法」に抗議する香港のデモ(写真:ロイター/アフロ)

今年の夏も香港が大荒れになりそうだ。

中国の全国人民代表大会(全人代)が決定した、香港を対象とする「国家安全法」の制定方針が現実のものとなれば、香港市民がかろうじて守ってきた自治や自由は風前の灯となる。その結果、「一国二制度」は実質的な終焉を迎え、同時に香港の経済的繁栄も遠からず消えてしまうだろう。

中国政府は8月にも新法を制定する予定だが、9月には香港の立法会議員選挙が控えている。民主派勢力のデモと警察との衝突は2019年よりも激しいものになるだろう。これからの数カ月が香港の未来を決定する重要なポイントとなることは間違いない。

■区議会選挙「大敗」が与えた衝撃

国際社会の厳しい批判を浴びることがわかっていながら、中国政府が法整備を急いだ理由は明らかだ。2019年の逃亡犯条例改正などの失敗と、それに続く香港の区議会議員選挙での大敗(民主派が8割の議席を占めた)は、中国政府にかなりの衝撃だった。

9月にはより重要な立法会議員選挙が予定されている。ここで民主派が過半数を占めるようなことにでもなれば、香港は完全に北京の中央政府のコントロールが利かなくなってしまう。もはや香港政府に民主派の動きを抑える力はないと判断し、自らの力で民主派の抑え込みに乗り出したのだ。

危機感を強めた中国側の動きは素早く、かつ計画的だった。区議会議員選挙の後、中国政府はすぐさま香港政府を飛び越えて国家安全法を制定する方針を固め、それを正当化する理論武装にとりかかった。

2020年に入ると、香港にある中国政府の出先機関トップを相次いで更迭し、体制を固めた。例年通りであれば3月に開催される全人代が決定の舞台だが、コロナウイルスの感染拡大で日程の見通しが立たなくなった。

延期された間、中国政府は指をくわえてみていたわけではない。3月末には新型コロナウイルスを理由に公の場で5人以上が集まることを禁じた。これで民主派の動きを抑え込むことが可能になった。

4月に入ると一気に動き出した。13日に出先機関の主任が、立法会で審議中の中国国歌の侮辱を禁じる条例に絡めて、「民主派議員が職権を乱用している」などと、議員資格の取り消しを示唆する脅しをかけた。続く15日、やはり出先機関の幹部が「香港はできるだけ早期に国家安全条例の導入に向けた作業を開始すべきだ」と、北京政府の動きを予告するような発言をした。

4月18日には民主化運動の主要メンバーら15人が、2019年のデモを理由に一斉に逮捕された。さらに翌19日、香港政府が「(北京にある)中央政府の各部門は香港の事務に干渉できない」という香港基本法の規定について、「国の出先機関にはこの条例が適用されない」という新たな解釈を公表し、北京政府が香港の行政に介入できるという立場を示した。これも新法制定に向けた布石である。

■王毅外相はどう正当化したのか

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