「〇〇美術館展」にたいした作品が来ないワケ 美術展の裏側はいったいどうなっているのか

東洋経済オンライン / 2020年6月6日 7時35分

「〇〇美術館展」にたいした作品が来ないワケとは? 「美術展」のウラオモテを元企画者の立場からお話しします(写真:baona/iStock)

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で、美術館や博物館が全国的に休館した。美術展に足を運びたい、再開館したらどの展示を見ようかと心待ちにしている人も多かっただろう。完全予約制や入場制限などの感染症対策を取りつつ徐々に再開館しているが、企画展などの再開は当面先といった対応を取っているところも多い。

拙著『美術展の不都合な真実』でも詳しく解説しているが、この機に「美術展」のウラオモテを、元企画者の立場からお話ししてみたい。まずは美術展における主な2タイプ、個展と「〇〇美術館展」の違いからだ。

個展とは、ある画家による作品群をそろえて見せるもの。この個展と正反対となる作りの展覧会が「〇〇美術館展」だ。ルーヴル美術館展、プラド美術館展、コートールド美術館展など、言ってみればこれらは海外の大美術館のコレクションが「引っ越し」してきたようなもので、これを「〇〇美術館展」や所蔵作品展と私は言っている。

■「〇〇美術館展」が増えている理由

この方式は平成になって、テレビ局が展覧会に参入するようになってからますます増えた。日本にいながらにしてルーヴルなどの所蔵作品をまとめて見られるのは素晴らしいことだが、なぜこんなに多いのだろうか。

これは簡単に言うと、企画するのが容易だから。まず新聞社やテレビ局の事業部員が世界各国の大美術館に通い、とくに大規模修理の時期をつかむ。館内の大改装のためコレクションが「お蔵入り」になったり、閉館になったりする時期に合わせて、そこから50~80点を借りるのだ。

このタイミングはその美術館の目玉と言われる作品が出品されるチャンスでもある。そして新聞社やテレビ局はだいたい1本の展覧会につき1億円から3億円くらいまでの借用料を払う。受け取った海外の美術館はそのお金を大規模修理の費用に充てるわけだ。

作品借用料という名目ではなく、「メセナ(企業によるアートの支援事業)」の形を取る場合も多い。

例えば、パリのポンピドゥー国立芸術文化センターの手前にある「ブランクーシ・アトリエ」は、1997年に東京都現代美術館で開催された「ポンピドー・コレクション展」の開催のために朝日新聞社が約3億円を寄付したお金で修復された。その入り口には、「朝日新聞の支援によって修復されました」という銘板がある。

パリのギメ東洋美術館には経団連の寄付を書いた銘板があり、ルーヴル美術館には《モナ・リザ》の展示室など数カ所に日本テレビの寄付が書かれている。

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