VWが出資した「中国大手電池メーカー」の正体 現地ではリチウムイオン電池の争奪戦が過熱

東洋経済オンライン / 2020年6月6日 7時50分

一方、VWが2019年に発表したMEBを採用した第1弾モデルEV「ID.3」には、NCM622やNCM811など三元系LIBが段階的に搭載される予定だ。電池パックの開発はVWが主導し、電池セルはLG化学、SKI、CATLから調達する。

2020年10月には中国で生産予定の同モデル(航速距離550㎞以上)はテスラのモデル3の競合車種となり、販売価格は300万円を切る可能性がある。そうなると、EV「ID.3」とすみ分けするため、JAC-VWの「SOL」にはさらにコストダウンが求められ、低コスト電池の採用が現実的な選択肢となるであろう。

ニッケル、マンガン、コバルトを正極材料として構成される三元系LIBは、性能のバランスがよく、かつ大容量による長い航続距離を実現できるものの、外部からの衝撃による短絡電流が電池の破裂・発火に至る場合がある。

一方、正極材料にリン酸鉄リチウムを使用するリン酸鉄リチウム電池(LFP) は、サイクル寿命が長く、熱安定性や安全性に優れており、エネルギー容量で三元系LIBの約8割にとどまるが、コストでは三元系LIBの4割にすぎない。ここでVWの視野に入ったのが、長年JACに電池を供給し、JAC₋VW工場に近隣するLFP大手の国軒だった。

■車載電池出荷量では中国3位

2019年の車載電池出荷量では国軒がCATL、BYDに次ぐ中国第3位、世界第7位であった。

創業者の李縝は1990年代末から合肥市政府傘下の都市開発企業のトップを務め、市内のインフラ整備を請け負っていた。2004年に設置した太陽光道路照明灯が電池の耐久性問題によりわずか半年で全部故障した。これを契機に、李は地場企業の蓄電技術の遅れを痛感し、市民に良い製品を供給することを決意した。

その後、中国科学技術大学が開発したLFP電池技術を活用し、2006年に国軒を設立。角型とラミネート型LFP電池を中心に生産体制を整え、2017年には三元系LIB (NCM622)の生産を開始した。

2008年に立ち上げた電池研究院には研究員2000人が在籍し、アメリカ・シリコンバレーやクリーブランド、独ボーフム、日本のつくばなど国内外7拠点で電池の研究開発が行われている。

現在、同社はLFP電池セル単体の密度を2017年の150Wh/kgから現在の200Wh/kgに引き上げ、航続距離400㎞超を実現した。2019年に吉利商用車(吉利汽車子会社)の電池調達総量の5割に相当する受注を獲得し、2020年中にはドイツのボッシュに電池モジュール、電池パックを供給する予定。インドでは、タタ・モータズと合弁工場を設立し、現地自動車メーカーへの電池供給を図ろうとしている。

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