ドイツが「消費税率3%下げ」に踏み切る意味 歳出削減を徹底、単なる景気対策ではない

東洋経済オンライン / 2020年6月8日 7時10分

リーマンショック直後に実質経済成長率が大きく落ち込んでも、ドイツは付加価値税を増税したまま税率を下げなかった。その直前に財政赤字が続いて政府債務残高が累増していたのが、当時のドイツ財政だった。

■失業給付抑制や年金支給開始年齢を引き上げ

財政収支均衡原則が盛り込まれた基本法の下、メルケル政権は財政改革に着手した。

歳出面では、長期失業者に対する失業給付の抑制、長期失業者に対する年金保険料支払いへの補助の廃止、子供を持つ親に対する手当の給付抑制、2012年以降に年金支給開始年齢の65歳から67歳への段階的引き上げ、公的医療給付の財源である連邦補助に法定上限を設けた総額管理、4万人規模の連邦国防軍兵士削減を含む防衛費の抑制、各省の裁量的経費の抑制といった策を実施した。

メルケル政権下では、社会保障支出の伸び率は名目経済成長率を下回っている。医療費は、診断群分類(DRG)と呼ばれる患者分類に応じて医療費を定額払いにする制度の下、定額払いを徹底して医療費を削減してきた。

日本でも、DRGに相当するとされる診療群分類包括評価(DPC)があるが、これは定額払いと出来高払いの混合で、出来高払い部分で医療費が膨張する恐れがある。入院医療にはDRGが適用されたが、外来医療では「家庭医中心医療」を掲げ、最初は登録した家庭医に診てもらい、その判断に従って専門的な医療を受ける仕組みを推進した。家庭医を含む開業医は地域ごと、診療科ごとに定員制をとっており、開業医の制限を徹底している。

他方、メルケル首相やCDU幹部らは、付加価値税率のさらなる引き上げには否定的だった。徹底した歳出削減に軸を置いて財政赤字を削減しつつ、付加価値税率を19%に維持し続けた。

こうした財政改革により、ドイツ全体の財政収支は2012年以降、黒字に転じ、8年連続で黒字を続けた。その単純合計は約2220億ユーロ(約27.3兆円)にのぼる。ドイツ全体の政府債務残高は、2014年末の2兆5043億ユーロ(約308兆円)から2019年末には2兆3509億ユーロ(約289兆円)へと1534億ユーロも減らしていた。日本のように、政府債務残高が減らなくても、政府債務残高対GDP比が低下していればよいという、悠長な国とは次元が違う。

ここには、ドイツが政府債務を自国通貨建てでは負えない(ユーロ建てで負うが、ユーロの発行権は欧州中央銀行が持つ)という発想は一切ない。あるのは、財政黒字によって将来の増税が避けられるという論理である。

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