フランス「自国語愛」にラジオ局が悲鳴上げる訳 厳しすぎる規制にラジオ局が救済求める

東洋経済オンライン / 2020年6月10日 10時0分

フランス政府の自国語保護政策に一部のラジオ局が不満の声を上げている(文化省の建物、筆者撮影)

新型コロナウイルス感染の拡大が世界各国の民間放送局の経営を揺さぶっている。欧州のテレビ・ラジオ業界もその例外ではない。

フランスでは3月から4月にかけてコロナが猛威を振るい、感染者数が急増。それに伴って広告市場が縮小し、同国の民間ラジオ局も大きな打撃を受けた。「ラジオ局の4月の広告収入は前年同月比80%減」。地元の新聞各紙はこう報じている。

■ラジオ組合団体が救済措置を要請

こうした中、同国の複数の民間ラジオ局や組合団体が4月、放送局の監督機関である視聴覚高等評議会(CSA)に対し、救済を求める書簡を提出した。民間ラジオ局に法律で義務付けられた「クォータ(割り当て)」と呼ばれる規制を順守することができなくても、向こう18カ月間は違反とみなさぬよう求めたものだ。

「クォータ」はフランスの言語政策に基づく放送局への規制である。その根底にあるのは、「フランス語を守ろう」という考え方だ。同国唯一の公用語はフランス語。憲法第2条にも「共和国の言語はフランス語」と記されている。

1994年には当時のトゥーボン文化相の主導で、フランス語を保護するための法律、いわゆる「トゥーボン法」が制定された。同法は広告、契約書、請求書、製品の使用説明書にいたるまでフランス語を使うよう義務付けたほか、デモ、シンポジウム、会議などで配布する資料にもフランス語の使用を求めている。

リーステール現文化相は昨年8月、トゥーボン法制定25周年にあたり、ツイッターでフランス語の使用を呼びかけた。「言語のグローバリゼーション化の中で、フランス語の地位を再確認しよう」。

かつては「パリの街でフランス人に英語で話しかけると、理解しているのにわからないふりをしてフランス語で返答してくる」などと揶揄する声もあったが、それは昔の話。今では若者中心にむしろ、英語を話すことに積極的だ。フランス語で道順を尋ねても、相手が日本人とわかれば英語で説明してくれるケースが多い。

最近では英語がそのまま、フランス語になった「フラングレ」と称される言葉も増えた。たとえば、「マネージメント(management)」。フランス語にはこれに相当する「ジェスチョン(gestion)」という言葉があるが、フランスの多くのビジネスパーソンは「ジェスチョン」でなく、「マナジュモン(management)」という言葉を好む。

文化相のツイートはこうしたフランス社会における「アングリシスム(英語化)」の浸透に対する警戒感の表れともいえる。

■ラジオ局を苦しめる「クォータ」

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