豚に3密を強いる農水省「放牧禁止」政策の是非 突然の方針発表に畜産農家の反対活動が拡大

東洋経済オンライン / 2020年6月12日 7時10分

突如、降って湧いた養豚場の「放牧禁止」方針。畜産現場では反対活動が広がりを見せている(写真提供:ぶぅふぅうぅ農園)

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、私たちは「3密」を避け、ソーシャルディスタンスを取ることが求められている。そうした情勢下、家畜飼育の現場においては、人間とは真逆の政策変更がなされようとしている。

「動物が運動をし、太陽の光を浴び、泥浴びをし、健康を保つ飼育方法である『放牧』の中止を強制させる規定が密かに決まり、もうすぐ公布されようとしている」。こう危機感をあらわにするのは、NPO法人アニマルライツセンターの岡田千尋代表理事だ。

発端は、農林水産省が進めている、家畜伝染病予防法の一部改正に伴う「飼養衛生管理基準」の見直し。この見直しは「豚、いのしし」「牛、水牛、鹿、めん羊、山羊」「鶏其の他家きん」「馬」の4基準で行われようとしているが、豚と牛に関する案の中に「大臣指定地域においては放牧場、パドック等における舎外飼養を中止」との記述が含まれている。

また、「放牧制限の準備」という項目があり、「放牧の停止又は制限があった場合に備え、家畜を飼養できる畜舎の確保又は出荷若しくは移動のための準備処置を講ずること」が盛り込まれている。つまり、外界との接触が避けられる畜舎を用意しろ、というのだ。

現状、影響が大きいのは豚の基準の見直しである。完全放牧で管理している畜産農家にとって、これは一大事だ。豚の放牧飼育をしている「ぶぅふぅうぅ農園」(山梨県韮崎市)の中嶋千里氏は、突然といえる農水省の豚の放牧禁止の方針に猛反発。5月21日に緊急呼びかけを行ったことで、関係者の間で反対活動が広がりをみせている。

■なぜ豚の放牧はいけないのか

農水省がこの放牧禁止の方針を打ち出した背景にあるのが、豚熱(旧称:豚コレラ)の感染拡大だ。5月13日から6月11日の日程で「家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令」に関するパブリックコメントの募集が行われたあと、7月1日に公布される予定だ。

2018年の発生から15万8000頭が殺処分された豚熱(豚コレラ)に加えて、中国や韓国、ベトナムなど、感染が日本のすぐそばまで迫っているアフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)に備えるのが目的である。

大臣指定地域には、豚熱に感染した野生イノシシがいる都府県および豚熱ワクチンを打っている地域が指定される見込みで、24都府県がこれに該当する。これらの地域にある放牧養豚場は放牧ができなくなる。

しかし、屋外で動物を飼育することによってウイルスに感染しやすくなるという科学的な根拠もなければ、屋内での飼育によって豚熱の感染が防げるという根拠もないと、前出の岡田氏は憤る。

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