収入ゼロでも「生活保護は恥ずかしい」男の心理 コロナの影響で「日雇い労働」の仕事を失った

東洋経済オンライン / 2020年6月26日 7時30分

私が不思議なのは、ヤスユキさんは命の危険を覚えるまで追い詰められながら、なぜ生活保護を利用しないのか、ということだ。ヤスユキさんだけではない。私はこの間、無料の食事提供や解雇、雇い止めの現場を取材したが、そこでは本当に多くの人が「生活保護だけは嫌」「そこまで自分を甘やかしたくない」と言って生活保護の利用を拒んだ。

ヤスユキさんの人に迷惑をかけたくないという気持ちを理解できないわけではない。ただ迷惑をかけるというなら、借金を踏み倒すことは褒められたことではないし、減免申請もしないで保険料を滞納した時点で、相互扶助が前提である保険制度の運営に影響を与えている。

私にヤスユキさんを責める意図はない。悪いのは、法外な金利を設定した金融業者であり、違法な働かせ方を野放しにする雇用政策である。借金についても一番後悔しているのはヤスユキさん自身だろう。ただ、なぜ生活保護を利用することに対してだけ、ここまでのスティグマ(社会的恥辱感)を抱くのか。そこが疑問なのだ。結論を先に言うなら、それは世間による生活保護バッシングが原因だろう。

6月15日の参議院決算委員会における生活保護をめぐる議論で、安倍晋三首相が「生活保護に対して攻撃的な言質を弄したのは自民党ではない」という旨の発言をしたのを聞き、耳を疑った。いやいや、生活保護利用者は怠け者、不正受給者が多いといったバッシングを続けてきたのは自民党でしょう。

具体例を上げよう。石原伸晃幹事長(当時)は2012年、報道番組で「ナマポ」という言葉を使ったあげく、「『(生活保護を)ゲットしちゃった』『簡単よ』『どこどこに行けばもらえるわよ』。こういうものを是正することはできる」と発言した。

ナマポとは生活保護の蔑称であるネットスラングだし、内容的にも簡単に不正受給ができるかのような誤解を招きかねない。“不正受給者”がなぜ女性言葉なんだというツッコミは脇に置くとしても、生活保護に対する歪んだ価値観が丸わかりになる失言である。

同じ時期、世耕弘成参院議員も雑誌で「生活保護受給者の権利が一定程度制限されるのは仕方ない」という旨の発言をしている。片山さつき参院議員も雑誌の対談や講演で「生活保護は働けるのに働かない人々を生み出す」「不正受給こそが問題」といった主張を繰り返してきた。何よりこの間、生活保護は恥という世論を作り出し、それに乗じて複数回にわたって生活保護基準を引き下げてきたのは、自民党ではなかったのか。

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