MMTでは解決しない「日本人の給料安すぎ問題」 労働生産性向上のため「産業構造」を転換せよ

東洋経済オンライン / 2020年7月9日 8時0分

たとえMMTの考え方が正しいとしても、「日本人の給料安すぎ問題」は解決できないといいます(撮影:梅谷秀司)

オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。

退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。

今回は、MMTの考え方では、日本経済最大の問題である「給料安すぎ問題」を解決できないことを解説してもらう。

■MMTは「給料安すぎ日本」の救世主になるか

先日発表した「日本人の「給料安すぎ問題」の意外すぎる悪影響」という記事に対して、ある方のツイッターで以下のような指摘をいただきました。

「アトキンソン氏のお話は先日ある学界で聞いたが、端的に言ってマクロ経済の理解を誤っている。GDP=人数×生産性なる数式を出して、小企業を淘汰して生産性を上げれば日本は成長するという。逆です。生産性=GDP÷人数だから、積極財政で成長させることが第一です」(原文ママ。改行は引用者が調整)

この意見には「給料安すぎ問題」に対する興味深い示唆が含まれているように感じたので、今回取り上げることにしました。

「GDP=人口×生産性」も「生産性=GDP÷人口」も数学的には同じことですが、言わんとする意図は伝わります。この意見は、「政府が財政支出を増やせばGDPが増える。生産性=GDP÷人口なので、生産性を上げることもできる」と解釈できると思います。

従来の考え方では、政府の支出は増税か国債の発行によって調達されるので、財政の健全性が問われて、上限があると言われていました。国の借金が1000兆円を超えている今の日本では、政府支出をこれ以上増やすのは難しいと考えられてきたのです。

しかし近年、「MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)」という理論が注目を集めるようになりました。MMTとは「インフレにならないかぎりにおいて、政府はいくらでも支出を増やすことができる」という主張です。従来のように、GDPに対する国の借金比率を気にする必要はないと論じられています。

この主張が正しいとすれば、日本政府は支出を大きく増やすことで、GDPを高めることができます。「生産性=GDP÷人口」ですから、生産性も上がります。

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