ベンチャー投資家の極意「黄金の時間の買い方」 日本がシリコンバレーで情報がとれない理由

東洋経済オンライン / 2020年7月15日 8時10分

この流れ自体は問題ないのですが、だからといって日本企業のCVCがいきなりシリコンバレーにやってきて、ベンチャー企業への投資が簡単にできるわけではない、ということには注意が必要です。

とくに大手企業のCVCの場合は、一度もベンチャー投資の経験がない人材が、財務や経理、企画といった部署から送り込まれてくることが少なくありません。突然、辞令ひとつで不慣れなベンチャーキャピタルの業界に放り込まれ、しかも勝手のわからないシリコンバレー。この二重の新天地で、どうしていいかわからない、という声が聞こえてくることも少なくありません。

英語が得意なわけでもなく、新規事業分野や投資分野など課題意識がはっきりしているわけでもなく、決裁権を持っているわけでもない。何かを決めるにも、「本社に確認するので1週間待ってほしい」という返事をする。これでは、ベンチャー企業から信頼してもらうことは難しいのです。コミュニティーやインナーサークルにも入ることは難しくなります。

結果的に、日本企業から派遣されて来られた方の中には、行き場がなくなってしまい、日本人ばかりで集まっているケースも少なくないのです。

しかも、話を聞いてみると、驚くようなKPI(重要業績評価指標)を与えられていたりします。なんと、毎期×件投資を決めなければいけない、という話を聞いたこともあります。ノルマを与えられた担当者は、どうしていいかわからなくて困り果てていました。先にも書いたように、良い案件に出合うのは至難の業なのです。

目利きを放棄して、とにかく投資して数を増やしたいというのは、CVCの本来の目標である、「質の良い新しい情報や技術の本業への取り込みに期待する」ことから完全に逸脱しています。

そもそもベンチャー投資は一番投資のリターンや協業の可能性が高い創立間もない時期に投資をする場合、手当り次第に投資をすると100件に3件ほど当たればいいい、十分に目利きをしても10件に1件、1割当たればいい、というのが現実なのです。

プロのベンチャーキャピタルでも9割は損か、少しの利益の案件ということです。その代わり、当たった1割でその損を取り戻す以上の利益を上げる。そういうモデルなのです。

ところが、その感覚もない。「できればすべてで投資を成功させたい」「本社の上司がそれを望んでいる」という無茶な要求もあります。

逆に日本の大企業のCVCだと知って、近づいていくベンチャーもいます。ここなら確実にお金を集められる、と。完全にカモネギです。実際、残念なことに、他のベンチャーキャピタルが「さすがに、ここは……」と躊躇するところに日本のCVCが投資をしていたりします。これが生き馬の目を抜くシリコンバレーの現実です。

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