世界的に住宅ローンの延滞が急増しそうだ 住宅価格下落と消費不振のスパイラルも不安

東洋経済オンライン / 2020年7月16日 7時45分

2000年以降の日本の住宅価格の下落幅は最大でも年率6.4%程度であったことや史上最低金利が続くとみられることから、年率2桁の暴落は考えにくいものの、年率4~5%の下落は十分ありうるだろう。

次に懸念されるのは、実体経済、とくに個人消費への影響だ。住宅価格の下落は個人のキャッシュフローに影響を与えるわけではない。ところが、資産価格が下落すると、所有者のマインドが冷え込んで消費を抑制するという「逆資産効果」が発生する可能性があるためだ。

特にアメリカではその関係が如実だ。2000年以降のデータでみると、5%の住宅価格の下落は、消費を0.7%ポイント程度押し下げるほどの影響がある。直近の個人消費の急落が一過性のものだとしても、今後の住宅価格が下落すれば回復の足を引っ張るだろう。

■収入減に住宅価格下落が追い打ち

日本ではアメリカほど明確な逆資産効果はみられないが、制度的にはより深刻な面もある。アメリカでは自宅を放棄すれば残債に苦しまなくても済むという「ノンリコースローン」が普及しているが、日本でははほとんどない。冒頭のようなケースでも、自宅を売却してもその価格がローン残高よりも下落していれば、債務が個人に残ってしまう。アメリカでは自宅は失うが残債は残らないというのが一般的だ。

したがって、日本人の精神的なバランスシートは、住宅価格が下落するとアメリカ以上に悪化しやすい。仮に5%の価格下落でも、6000万円の物件であれば300万円もの“実質債務超過“となる。

マネックス証券が5月27日~6月1日に行ったアンケートでは、収入が「減少した・減少すると思う」と答えた人は40%を超え、うち、10.3%の回答者は3割以上の収入減を見込んでいる。個人の住宅関連の支出は、新型コロナ関連の支援がまだ行きわたっていない分野だ。過去に例を見ない数の世帯がこの問題に悩んでいる可能性がある中で、収入減による消費の冷え込みに、住宅価格の下落が追い打ちをかけかねない。足元のデータは嵐の前の静けさかもしれない。

大槻 奈那:マネックス証券 執行役員

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