東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳

東洋経済オンライン / 2020年7月16日 18時0分

「30億円の赤字は、ボーナスを前年並みに支給した場合の推計値です。結局、ボーナスはゼロだったわけですから、30億円の赤字は理屈に合いませんね」

女子医大関係者は、看護師の離職について、大学側の認識を明かした。

「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです」

また、若い看護師を次々に入れ替えるほうが、人件費は安く済むという現実もある。

実際、女子医大では来年度に向けて、すでに330人の看護師を募集していた。

ただし、今回は例年を超える大量の離職者が出ることが必至。現場にも悪影響が出ているという声が、労働組合に寄せられている。

「ただでさえ看護師が足りていないのに、ここから辞めてしまったら経験者もいなくなり、患者の安全も守れないでしょう」(30代・看護師)

「私たち看護職がいなくなったら、誰が看護をするんですか? 看護の質も下がり、インシデント(※)の数は増えていませんか? このままでよいのですか?」(20代・看護師)

(※)重大な事件・事故に発展する可能性がある事象やミス

同じ新宿区内にある東京医科大学病院では、ボーナスは例年と変わらず、さらにコロナ特別手当として医師、看護師などに月額2万円が支給されている。都内の別の大学病院でもコロナ手当があり、今夏のボーナスがゼロというところはない。

東京女子医大だけがなぜ違うのか。探っていくと、名門大学病院の知られざる「裏の顔」が浮かび上がってきた。

■名門大学病院の凋落を招いた、医療事故と同族経営

外科医の本田宏氏は弘前大学医学部を卒業後、1981年に女子医大の医局に入った。

「心臓、肝臓、腎臓などの外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だったのです。ここで私は肝臓の移植医になるつもりでした。でも、実際に入ってみると、まるで西部劇のような大学で、給料も安く、若手の医者や看護師はディスポーザブル(使い捨て)のように扱われていたのです」

当時、ガチガチの“男社会”だった日本の医療界。東京女子医大でさえ、生え抜きの女医が教授になるケースは多くなかった。

そこで、腕に自信のある医者たちが、全国各地から一旗あげようと東京女子医大に集まっていたのである。これが本田医師の目には「西部劇」のように映ったという。

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