日本人は「1億総中流」崩壊の深刻さを知らない コロナで自営業者や個人事業主が苦しんでいる

東洋経済オンライン / 2020年8月5日 10時0分

今回、新たにあらわになったのは、階級論の用語を用いれば「旧中間階級」に属する人々の脆弱性だ(写真:MaCC/PIXTA)

新型コロナ禍は日本における格差をさらに拡大させ、中流層が下流に転落するリスクがかつてないほどに高まっている。社会学者の橋本健二氏は著書『中流崩壊』で、中流内の2つの階級である、ホワイトカラーの会社員を中心とした「新中間階級」と、自営業者を中心とした「旧中間階級」の分断が進み、格差と対立が深刻なものになりつつあると指摘する。

日本は“階級社会”化に歯止めがかからず、中流層は消滅していくのだろうか。同書より一部を抜粋し、3回にわたってお届けする。

■コロナが完全に消し去った「一億総中流」の幻想

「一億総中流」――。いまとなっては、なんとも懐かしい響きの言葉である。

かつては存在していた、少なくとも存在すると信じられていたが、すでに失われ、あるいは誰も信じなくなっている。豊かさも生活のあり方もさまざまな日本人の全体を、強引にひとつに結びつける言葉という意味では、アジア・太平洋戦争中の「一億火の玉」にもたとえられようか。

1980年代から始まった格差拡大は、日本の社会のあちこちに巨大な分断をつくりだし、これを形容する言葉は「格差社会」に取って代わられた。そして「格差社会」の地点に立って過去をふりかえれば、いまよりは小さかったとはいえ、また気づかれにくかったとはいえ、当時の日本にも大きな格差があったことがよくみえてくる。

そして日本では2020年1月から始まった新型コロナ感染症の蔓延は、「一億総中流」の幻想を、最終的に消し去ったといっていいだろう。なぜなら新型コロナ禍は、すべての人々に平等に襲いかかったのではなかったからである。同じような年齢で、同じような健康状態であれば、抵抗力そのものには違いがないのかもしれない。しかし、身体的な抵抗力は大きな問題ではなかったのだ。

私たちは連日、新型コロナ感染症の流行で苦境に陥った人々についての報道を目にしてきた。その多くは非正規労働者に関するもので、これら弱い立場の労働者が、まっさきに雇い止めとなり、収入の道を断たれるという事態が、また繰り返されていることを伝えていた。

労働組合の幹部は、これを「コロナ切り」と呼んでいたという。非正規で働くシングルマザーの多くが、収入が減った上に臨時休校で子どもの世話もしなければならず、給食がないので食費もかさみ、追い詰められた。多くの外国人労働者も雇い止めを受け、帰国する交通費もなく、職につくあてもなく、途方に暮れた。

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