ヤマ発が「赤字子会社」を完全に取り込んだ理由 ロボティクス事業で投資を加速する狙いとは

東洋経済オンライン / 2020年8月20日 7時5分

ヤマハ発動機のロボティクス事業の工場。コロナ禍でも稼働を続けた(写真:ヤマハ発動機)

2020年7月、ヤマハ発動機がある子会社に約115億円を投じ、完全子会社化した。その企業名はヤマハモーターロボティクスホールディングス(YMRH)。同社は2019年12月期に39億円の営業赤字を計上するなど、業績不振が続いていた。完全子会社化に伴い、YMRHは上場廃止となった。

ヤマハ発動機といえば、バイクや船のイメージがあるだろう。実際、それらの売り上げは同社全体の86%を占める(2019年実績)。一方、次なる収益柱の確立を目指して、足元で力を入れているのがロボティクス事業だ。

同事業はFA(ファクトリーオートメーション、工場自動化)機器からスタートし、現在は農薬散布用の無人機なども手がける。そのロボティクス事業を支えるのが表面実装機(SMT)と呼ばれる、半導体を作るための機械だ。

■戦いの最終局面で投資を加速

「ここは成長分野。戦いの最終局面に来ていて、(投資を)加速する必要があった」。ヤマハ発動機でロボティクスを担当する加藤敏純取締役は、今回のYMRH完全子会社化の狙いについてそう語る。

YMRHは、2019年7月に半導体製造装置メーカーの新川とアピックヤマダ、ヤマハ発動機の一部門が統合してできた。新川は統合直前の2019年3月期に12.5億円の営業赤字。アピックヤマダは6.7億円の営業赤字を抱えていた。いずれも、重い固定費が経営を圧迫しており、統合後は生産拠点の集約や人員整理、調達の一本化を進めてきた。

そもそも、半導体は化学的な素材を加工する前工程と、その素材を形にする後工程を経たうえで、SMTで表面に回路を印刷して完成する。数百もの工程でそれぞれ異なる装置が必要となり、それらを手がけるメーカーの顔ぶれも異なる。スマートフォンやパソコンなどあらゆる電子機器の“頭脳”として使われるほか、5G通信向け、自動車関連の需要も伸びている。

ヤマハ発動機が中・小型のFA向けの産業用ロボット製造に参入したのが1984年のこと。その後、SMTに参入し、コア技術の自社開発やカスタムへの柔軟な対応など強みを生かし、事業を継続してきた。

東京エレクトロンなどが手がける前工程の製造装置は1台数十億円のものもあり、市場規模も大きい。後工程でも数億円規模の製造装置があるが、SMTは一般的には1000万~2000万円の機器が多く、額はそれほど大きくない。

SMTはかつてカシオやシチズンも取り扱っていたが、現在はパナソニック、フジ、ヤマハ発動機と、オランダに本社を持つASMがシェアの大半を握る。これまでは半導体製造の各工程は専門の企業が担っていたが、そこに風穴を開けたのがASMだ。同社は香港のファンドを通じて、ほかの工程を含めた欧米系の半導体製造装置メーカーを次々と傘下に収め、一気通貫での販売を可能にした。

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