スバル、アメリカ市場のシェア拡大に残る課題 コロナ禍でもフル生産で在庫積み増しを急ぐ

東洋経済オンライン / 2020年8月25日 7時25分

SUBARUのアメリカの生産拠点であるSIA。2019年度の生産実績は37.2万台(提供:スバル)

「アメリカで中長期的にシェア5%を目指している」――。世界的にコロナの収束が見えない中、SUBARU(スバル)の中村知美社長は8月4日の決算会見で“強気”の目標を口にした。

コロナでの生産停止や販売店の休止影響を受けて2020年4月~6月期の売上高は前年同期比45.2%減の4569億円、営業利益は156億の赤字となった。期初の段階で「未定」としていた2021年3月期の通期業績予想も公表し、売上高2.9兆円(前期比13.3%減)、営業利益800億円(同62%減)を見込む。

大幅減益で厳しいのは確かだが、他社と比べると見え方が違ってくる。販売台数が同等規模のマツダは2021年3月に400億円の営業赤字見通し。経営再建中の日産は4700億円の巨額赤字を見込む。黒字を確保するトヨタ自動車は前期比79.2%減の5000億円、ホンダは前期比68.4%減の2000億円を計画する。減益幅でみると日本の自動車メーカーの中でスバル(62%減)がいちばん小さい(スズキは業績見通しを未定としている)。

■直近の市場シェアは過去最高を更新

カギを握るのがスバルの世界販売(2019年3月期は103万台)の7割を占めるアメリカ市場だ。今期のアメリカの新車市場は1400万~1450万台(前期比約15~18%減)を見込み、スバル自身の販売目標は59万~60万台(約15~16%減)を予想する。つまり、需要減にはあらがえないが、減少幅を最小限に食い止めて、アメリカでのシェア拡大を狙っているのだ。

目下、コロナの影響からアメリカの全体需要が落ち込む中、スバルはむしろシェアを上げており、5月は4.59%、6月は4.68%と過去最高を更新(2019年暦年ベースのシェアは4.11%)。この要因について、中村社長は「比較的世帯年収が高く、不況に強いお客様に支えられている」と分析する。

もう1つの要因が、フリートと呼ばれるレンタカーや法人向け販売の少なさだ。この分野は一括で大きな台数が販売できる反面、値引き競争に巻き込まれやすく、不況にも弱い。日産はカルロス・ゴーン元会長の下、アメリカ市場の販売拡大を図るため、フリートを積極的に展開した。その結果、コロナによる法人需要の急減を受け、販売減に苦しんでいる。

ただし、シェア拡大が順調に進むとも限らない。7月のアメリカでの販売でややブレーキがかかったからだ。3月、4月は前年同月比で40%以上の減少となったが、6月は12.4%減まで回復していた。だが、7月は19.7%減と再び減少幅が拡大している。

この要因が在庫の少なさだった。アメリカでは通常、ディーラーが車の在庫を抱えて販売する。一般的な自動車メーカーではおよそ60日分の在庫を持つ。スバルのディーラーはもともと、20日~30日分程度の在庫しかなかった。

これはコロナ前まで需要が旺盛で生産が十分に追いついていなかったからだ。このため、中村社長は2020年3月期の中間決算の会見時(2019年11月)に、「(アメリカの)在庫を最低1カ月から最大1.5カ月分程度確保したい」と説明していた。

■操業停止で在庫がさらに減少

ところが、コロナが世界を襲い在庫積み増しの目論見が狂った。スバルは海外調達の部品不足などを理由に2020年3月23日から6月末にかけて大規模な生産調整を実施した。

アメリカの現地生産工場であるSIAに加え、一部車種をアメリカにも輸出する群馬製作所も一時操業を停止したため、約17万台の減産となった。一方、同じ期間の販売台数は13万台程度の減少に収まり、もともと少なかった在庫がいっそう減少した。

8月4日のアナリスト向けの説明会で、スバルは7月のアメリカの落ち込みについて「売れ筋のフォレスターやクロストレックを中心に在庫水準が極端に落ち込んだ影響」と説明した。7月時点の在庫は15日分弱まで低下したもようだ。ただ、7月上旬から、群馬製作所とSIA、すべての自動車生産拠点で生産をおおむね平常化している。休日出勤も平年並みの水準で行っており、文字どおりのフル操業状態にある。部品在庫も可能な限り積み増すなどして、生産が滞らないように細心の注意を払っている。

しかし、アメリカの需要回復が続けば、過少在庫を早期に解消することは難しい。そうすると、在庫不足からディーラーによっては売り逃しが出てくる可能性もある。第2波の影響が懸念される中、順調に生産を続け、どこまで在庫を積み増せるか。シェア5%を目指すうえで、気が抜けない状況が続きそうだ。

中野 大樹:東洋経済 記者

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