「脳腫瘍で別人格」40代男性を支えた妻の受難 夫の介護と子育てをしながら公務員になった

東洋経済オンライン / 2020年9月6日 7時35分

脳腫瘍が原因で夫の性格が豹変し、暴言・暴力がエスカレート。葛藤と孤独の果てに下した妻の決断とは?(写真:buritora/PIXTA)

子育てと介護が同時期に発生する状態を「ダブルケア」という。ダブルケアについて調べていると、子育てと介護の負担が、親族の中の1人に集中しているケースが散見される。

なぜそのような偏りが起きるのだろう。

連載第10回は、40代で脳腫瘍が発覚し、手術後、高次脳機能障害になり、性格が激変してしまった夫の介護と子育てをしながら公務員試験を受け、一家の大黒柱として働いてきた女性の事例から、ダブルケアを乗り越えるヒントを探ってみたい。

■夫に脳腫瘍が発覚

宮城県在住の新田夏美さん(仮名、48歳)は、18歳で非正規公務員として就職し、同じ職場で働いていた夫と出会い、23歳で結婚。約1年後には長女、その6年後には次女が誕生し、子育てと仕事で忙しいながらも、幸せに暮らしていた。

ところが2012年のゴールデンウィーク。家族で新田さんの実家へ帰省しようとしていたところ、車を運転していた夫が道を間違える。

「自宅から近く、普段からよく通る道だったので、少し嫌な予感がしました。ゴールデンウィーク明けには、仕事帰りに夫に買い物を頼んだのですが、忘れて帰ってきてしまい、『何かおかしい』と違和感を抱きました」

そして6月のある朝、夫は起き抜けに激しい目眩(めまい)を訴え、布団に突っ伏したまま15分ほど動けなくなる。

不安に思った新田さんはその翌日の夜、夫を伴い自宅近くの病院を受診。頭部CTを撮ったところ、脳腫瘍が発覚。

すぐに大学付属病院を紹介され、精密検査を受けると、腫瘍は6センチ大になっていた。

夫は10月に手術を受けることができたが、手術室に入る前までは穏やかで優しかった夫が、手術を境に性格が変わってしまっていた。

■高次脳機能障害に

手術から約1週間後のこと。病院の売店に夫と2人で行くと、夫は陳列棚に身体の左側をぶつけてしまう。すると棚にあった商品がバラバラと床に落ちた。

慌てて新田さんが商品を拾い始めたが、夫は顔色ひとつ変えず突っ立ったまま。

変に思った新田さんが「どうしたの?」と聞いても、「別に」と一言。新田さんが拾う様子を眺めているだけだった。

「夫は半月ほどで退院しましたが、手術前と比べるとこだわりが強く、怒りっぽくなり、物忘れが多くなりました。でも、当時高校2年だった長女も、小学5年だった次女も、まだ笑って済ませられる程度でした」

しかし2013年の1月、年末年始の休み明けから復職した夫は、手術前のように仕事ができなくなっていた。

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