リニア提訴を前に露呈、静岡県の不都合な真実 県の専門部会委員が訴訟準備勉強会の講師に

東洋経済オンライン / 2020年9月11日 7時10分

JR東海のリニア工事を視察する川勝平太知事、両隣が県専門部会委員の塩坂邦雄氏(左)、宇野護JR東海副社長(2019年6月13日、筆者撮影)

リニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区(8.9km)の建設に反対し、大井川流域の住民がJR東海を相手に、工事差し止めを求める訴訟を近く、静岡地裁に起こす。「62万人の命の水」と「南アルプスエコパーク」を守る訴訟と位置づけ、法的根拠に川勝平太静岡県知事の主張がそのまま盛り込まれる。

「リニアに反対しない」と言う川勝知事だが、原告側証人として法廷に立つ可能性も出てきた。「リニア中止を叫ぶ」静岡県民の輪が広がれば、JR東海にはこれまで以上に厄介の種が増える。国土交通省に対応を任せるだけでは「静岡問題」解決は遠のくだろう。

■JR東海は「環境に影響なし」と立証できるか

訴訟を準備する市民団体が9月5日、原告団への参加を呼び掛ける「学習会」を静岡市で開いた。約90人が参加した学習会で、西ヶ谷知成弁護士は「大井川の水量が減ることによって生活権が侵害され、南アルプスの自然環境を享受する権利も失われる」とリニア工事で侵害される住民の利益を守る訴訟だと説明した。

まさに、訴訟と同じテーマが県環境保全連絡会議地質構造・水資源、生物多様性の2つの専門部会で議論されてきた。2年以上の議論は平行線をたどり、膠着状態の打開を図るため、国交省提案の有識者会議に議論の場を移したが、いまだに解決の糸口は見えない。南アルプスを貫通するリニアトンネル工事によって、大井川の水量減少、大幅な地下水位低下による自然環境への影響をJR東海は認めている。JR東海が、住民の生活権や環境権の侵害がないことを裁判で立証するのは容易ではないだろう。

この日は、2017年9月、国を相手取り、リニア工事差し止めを求めた行政訴訟の原告団長、川村晃生・慶応義塾大学名誉教授が甲府市から駆け付け、「川勝知事が頑張ってくれているいまこそ、リニアをストップさせる大きなチャンス。62万人の命の水は、静岡県民すべての問題」と、川勝知事との“連帯”を訴えた。

県がJR東海の環境アセスメント(環境影響評価)に厳しい批判を続けているだけに、川村氏らは川勝知事の主張が住民サイドに立つと高く評価してきた。行政訴訟に有利に働くよう、メディアの注目を集める川勝知事の発信力に期待したいのだろう。

訴訟に向けた「学習会」のメイン講師は、県の地質構造・水資源専門部会委員を務める地質学者、塩坂邦雄氏。7月末に開催された合同専門部会を受け、県が8月13日、国交省へ送った意見書を塩坂氏は資料として配布した。JR東海が環境アセスメントで使用した水収支解析方法、生物多様性への影響への疑問点を指摘し、「南アルプスの地質構造や断層の考え方がJR東海はわかっていない」、「環境アセスメントは“環境アワスメント”で初めから事業ありきのものだった。もう一度、環境アセスメントをやり直すべき」など約1時間にわたって持論を展開した。まさに、今回訴訟の理論的裏付けを担う存在感を発揮した。

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