民放が「ネット同時配信」でもたつく根本理由 日テレは「トライアルで開始」も、課題は山積

東洋経済オンライン / 2020年9月14日 7時20分

テレビのネット同時配信は広がっていくのか(写真:xiangtao/ PIXTA)

民放キー局のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むきっかけとなるか。日本テレビは7月、自社が放送するテレビ番組のインターネットでの同時配信を今年10月から12月にトライアルで実施すると発表した。

対象とするのはプライム帯と呼ばれる19時から23時に放送している番組で、権利許諾等を取れたものに限るという。民放キー局を中心に運営する無料配信サービス「TVer(ティーバー)」などを通じて配信することを想定し、視聴動向を見ながら、本格実施に向けた検討を進める方針だ。

テレビ番組のネット同時配信は、各局の“懸案事項”として長年語られてきたもの。背景にあるのは、若年層を中心にした「テレビ離れ」だ。総務省の調査によれば、10代、20代のテレビ視聴時間は、2014年時点でネット利用時間に追い抜かされており、その差は年々開く一方だ。

■先陣を切ったが、あくまで「トライアル」

テレビ局のビジネスはテレビCMを中心にした広告収入で成り立っている。スポンサーの多くは購買意欲が強い、もしくは今後のターゲットになるファミリー層や若年層への訴求ができる媒体への出稿を希望する。今後も若年層の「テレビ離れ」が進めばテレビCMの価値低下は避けられず、新しいチャネルを開拓する必要性が高まっていた。

日本テレビも「テレビを持っていない、あるいはテレビを見る機会が少ない皆さんに対して、地上波のコンテンツとの接触機会をとにかく促進する」(日本テレビ定例会見要旨)ことを目指し、今回のトライアルに至った。

NHKは3月から、1日約18時間のネット同時配信サービス「NHKプラス」の運用を始めているが、民放では日本テレビが先陣を切った形だ。今後、ほかの民放各局での対応が広がっていく可能性はあるが、日本テレビがあくまで「トライアル」として期間や時間帯を区切ったことには、民放各局がネット同時配信に簡単には踏み切れない事情も見え隠れする。

「検討するべき材料は膨大だ」。あるキー局局員はそう語る。実際にどのような課題があるのか。関係者が口をそろえて語るのが「権利処理」と「コスト」の問題だ。

テレビ番組は音楽の著作権や特定の映像を使う際の使用権など、さまざまな「権利」で成り立っている。現行、日本の著作権法では地上波放送とネット同時配信が別物として扱われており、ネットで配信する場合にはそうした権利処理を改めて行う必要が出てくる。

例えば現在の地上波放送では、著作権者が不明な場合などで、相当な努力を行っても権利者と連絡が取れなければ、文化庁の裁定を受け放送することが可能だ。しかし現状、同時配信ではその仕組みを使うことができない。こうした事情で許諾が得られず、地上波放送では視聴できるが、ネット同時配信では視聴できない番組・場面も出てくると予想される。

■さまざまなコスト増が懸念

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