今の40歳前後「非正規・未婚者」が抱く深い憂鬱 生活苦の「新しい中年クライシス」が起きている

東洋経済オンライン / 2020年9月22日 18時0分

「就職氷河期」世代の格差問題は、中年期における心の問題ともあいまって複雑・深刻化している(写真:KatarzynaBialasiewicz/iStock)

1990年代半ばから2000年代前半の「就職氷河期」。その影響を全面に受けた世代が今、大きな格差に直面している。一度レールから落ちてしまった人に厳しい日本社会の特徴が、就職時期に「機会の平等」を享受できなかった中年世代の上に重くのしかかっている。

しかし、それは決して特定の世代の問題ではない。格差問題に取り組み続けている橘木俊詔氏の新刊『中年格差』から、本書の一部を抜粋・再編集してお届けする。

■中年期に人格の形成が確立の方向に向かう

19世紀後半から20世紀初頭にかけて心理学の発展に大きく寄与したフロイトは、幼児期における心理や人格形成がその人のその後の一生を決める上で重要な役割を演じると主張した。すなわち、幼児期の心理的葛藤が、成人期、あるいは中年期まで続くとともに、人格の形成に大きく影響を及ぼすと考えたのである。裏返して言えば、幼年期にある程度の心理特徴が定まれば、それ以降は比較的安定した心理状態が続くのである。

しかしフロイトの弟子であったが、彼から去ったユングは中年になって人間の心理は大きく変容することがあると主張し、中年期における人間の心理を探求することの重要性を説いた。

なぜかといえば、中年になると職業を持って仕事をして所得を稼ぐようになるし、結婚して子どもを持って家族を形成するので、まわりの人との付き合いが多くなる。子どものことで悩むことがあるし、中年後半になると親の介護の問題が発生し、それらが心理的な変容と葛藤を生む可能性があると考えた。それによって自己を見直す機会が与えられるので、人格の形成が確立の方向に向かうと考えたのである。

日本におけるユング心理学の継承者である河合隼雄が、「中年クライシス」を論じたのもその影響であると理解できる。河合の著書『中年クライシス』(朝日文芸文庫)、『多層化するライフサイクル』(岩波書店)によると、若年代や中年前期においては、仕事、社会的地位、財産を築き、そして家庭を持つことに必死になるので、自分は何のために生きているのかとか、自分は何者なのかというアイデンティティの問題、自我が何を基礎としているのかなどを考える余裕がなく過ごしてしまうとする。

特に普通の能力を持った人は、仕事、地位、家族、財産などへの対応に忙殺されてしまい、ここで述べた人間の存在意義やアイデンティティ、自我を考える暇などなかったのである。

そこでユングは、恵まれた能力や環境にいる人々が、仕事、地位、家族、財産などに立ち向かっている時期に、特に人間の存在意義とか自我を考える人物となっていることを明らかにした、と河合は主張している。

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