原発事故賠償の天王山、「生業訴訟」判決の行方 仙台高裁で国の責任めぐり、初の判決が下る

東洋経済オンライン / 2020年9月27日 7時10分

国と東電の責任を追及する「生業訴訟」の原告と支援者(記者撮影)

仙台高等裁判所で9月30日、国と東京電力を相手取った福島第一原子力発電所事故の被災者による「生業(なりわい)訴訟」の判決が予定されている。

原告の総数は3627人と、原発事故の被害救済を求めて全国で争われている約30件の訴訟のうちで最も規模が大きい。国および東電の両者を相手取っての高裁判決としては初めての事例となり、原発事故訴訟の「天王山」と目されている。

原告は、国および東電の法的責任の再認定とともに、空間放射線量率を原発事故前に戻す「原状回復」および「平穏生活権」の侵害に対する慰謝料を求めている。

福島県富岡町の自宅が「帰還困難区域」に指定された深谷敬子さん(76)は、判決が出る日を特別な思いで待ち続けている。「避難を強いられてから9年半たっても大変な思いをしている。そのことを理解してもらったうえで判決を出してほしい」(深谷さん)。

今まで経験したことのない強い揺れを体験した2011年3月11日の夕方、地元の消防団員からの「とにかく西へ逃げてください」という指示に従った。それ以来、深谷さんは知人から紹介された廃屋同然の空き家や旅館、壁が薄くプライバシーのない賃貸住宅など約10カ所を転々とする避難生活を続けた。県の復興公営住宅を経て、長男が用意した郡山市内の二間の住宅に腰を落ち着けたのは2019年11月のことだ。

■失われた平穏な生活、今も帰還困難

仙台高裁の裁判長らは2019年5月27日、「浜通り」と呼ばれる原発周辺地域の被害や復興の状況を自ら見て回った。「現地進行協議」と呼ばれる手続きだ。このとき、深谷さんの元の自宅も調査の対象となった。

深谷さんの自宅がある富岡町の夜ノ森地区は放射線量が高かったことから「帰還困難区域」に指定されており、戻って生活することができない。帰還困難区域の入り口にはゲートが設けられていて、立ち入りには町の許可が必要だ。

原発事故から長い年月が経過するうちに、人の住まなくなった自宅は荒れ果てていた。立ち入りが難しい地区であるにもかかわらず自宅の中には誰かが侵入したようだった。仏壇は何者かが移動し、畳の一部には獣によって荒らされた跡が残されていた。同じ敷地内の美容室は天井が抜け落ち、人の背丈よりも高く雑草が生い茂っていた。

「私は自宅で美容室を営んでいた。仕事をしながらの近所の人たちとの語らいが何よりの楽しみだった。そんな生活が原発事故によって一瞬のうちに失われてしまった。親しくしていたお客さんとも連絡が取れません」。深谷さんはそうした被害のありさまを裁判で切々と語った。

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