科学的根拠が示す「老いなき世界」のリアル度 「老いは自然なもの」と考える人の決定的誤解

東洋経済オンライン / 2020年9月28日 7時40分

最先端の生命科学によって、何度でも再チャレンジできる人生が実現するといいます(写真:sidelniikov/PIXTA)

人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。しかし、私たちはよりよく生きるようになったと言えるだろうか? もしいくつになっても若い体や心のままで生きることが可能となったら、社会、ビジネス、あなたの人生はどう変わるのだろうか?

ハーバード大学医学大学院の教授で、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏が、人類が「老いない身体」を手に入れる未来がすぐそこに迫っていることを示した、全米ベストセラー『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』の日本語訳がついに刊行された。

今回は、大阪大学大学院・生命機能研究科および医学系研究科教授の仲野徹氏が、本書を解説する。

■老化の常識に対する挑戦状

アンチエイジング(抗老化)にはどんなイメージを持っておられるだろう。大枚をはたいてやっているという積極派から、なんとなくうさんくささを感じる懐疑派、あるいは、とくに興味はないという無関心派などに分かれそうである。しかし、たとえどの派に属していても、この本に書かれている老化についての物語を読めば、絶対に驚かれるはずだ。

生物学的な老化というものをイメージしてほしい。まず確実なことは、皆に等しくではないとしても、誰にも必ず訪れるということ。言い換えると、老化現象は、正常とまでは言えなくとも、それに近いプロセスであるということだ。老化だから仕方ないと言われたら、諦めて納得してしまうのはそのせいだ。

もう1つ間違いないのは、目が悪くなる、膝が痛くなる、腎臓の機能が落ちるなど、その症状は極めて多彩であるということ。すなわち、老化現象というのは、働きのまったく違う臓器が、さまざまなメカニズムによってそれぞれに侵されていく過程であると考えることができる。

これら2つのことに異論を唱える人はおられないだろう。

しかし、この本は、これら2つの「常識」に対する挑戦状である。……と聞くと、トンデモ本ではないかと思われるかもしれない。しかし、それは間違っている。驚くべきことに、本の内容は科学的な立場から見て、極めてまっとうなのである。

著者はデビッド・シンクレアとマシュー・ラプラントで、ラプラントはサイエンスコミュニケーションが専門の大学教員にしてジャーナリスト。そして、シンクレアは老化研究では知らぬ者のない第一人者である。

老化は正常な過程ではなく「病気」である、というのがシンクレアの基本的な考えだ。すべての人に訪れるからといって、病気ではなくて正常過程だと考える必要はないのではないか、という解釈である。言われてみれば確かにそうだ。

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