足立区の病院「クラスター発生→撲滅」の全記録 立ち入り調査きっかけに「職員の士気上がった」

東洋経済オンライン / 2020年10月2日 18時10分

ところが、入院経過の中で突然、発熱の症状が出て、再度調べたところ、PCR「陽性」となった。最初の発熱が8月15日にあり、一般的な治療を行った。抗原検査をしたら「陽性」となり、同室者の4人の患者のうち、もう1人発熱患者がいて、その患者の抗原検査は「陽性」だった。残りの2人は発熱症状がなかったが、念のためPCR検査をしたところ「陽性」だった。

この事態に並行して保健所に連絡したところ、同じ階の患者全員を調べるよう指導があったのでPCR検査をしたところ、離れた大部屋の患者1人から「陽性」が出た。ほかの階の病棟では発熱者を優先して調べたところ、同じく大部屋で1人がPCR検査で「陽性」となった。これでクラスターの基準に該当したので、区と都に相談して調査を開始することになった。

■職員の感染対策は問題なし

記者会見翌日の24日から9月2日までの間、保健所と都実地疫学専門家チーム、それに厚労省のクラスター対策班、感染対策チームの合同調査が実施された。この期間中ほぼ毎日、10人を超える調査担当者が病院を出入りした。しかし、これらの疫学調査ではいろいろな可能性はあるものの、感染経路や大部屋の同時発生以外の患者発生の関連について特定されるまでには至らなかった。

この調査の期間中、新型コロナ下の感染防止対策などのチェックを受けた。現場の感染防止対策の細部についてコメントがあり、さらに職員全員が均質な感染防止対策を確実に実行できる体制を構築するよう指導を受けたが、基本的な感染対策の方針や手順に深刻な問題点を指摘されることはなく、改善命令などが出されることはなかった。

等潤病院では3月から病院の敷地内に屋外テントを張り、病院入口では一般患者、発熱患者、さらには新型コロナ疑い患者の、3つに動線をはっきりと分けた。トリアージナース(患者の重症度を判断し、診察の優先順位を決める看護師)も配置した。入口で新型コロナ疑いとされた患者は、救急搬送用の控室で待機してもらった。また、救急搬送で新型コロナ疑い患者を受け入れる際は、ほかの疾患の患者と分けて待機するよう誘導していた。

厚労省のクラスター対策班などの調査が入り、第三者の客観的な視点からの評価を受けて、職員たちはかえって、これまで自分たちが取り組んできた感染防止対策は基本的には間違っていなかったと確信した。

調査に立ち会っていた伊藤院長は、「外来の発熱患者への対応や、新型コロナ疑い患者を含めた救急搬送患者を受け入れるための工夫を評価された。合同調査をきっかけに職員の士気が一気に上がった。職員の多くが感染防止対策をさらに徹底して、この地域住民の医療を守ろうというムードが高まった」と当時を振り返る。

■インフル同時流行時の医療事情はより深刻に

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