テスラが危なっかしいのに抜群の期待集める訳 EVベンチャーの「死の谷」乗り越え新境地へ挑む

東洋経済オンライン / 2020年10月5日 7時20分

テスラと同時期に創業したEVベンチャーは大半が倒産した。最近でも中国のEVベンチャー、バイトンが経営難に陥っている。死の谷を渡りきったのは、今のところテスラだけだ。

■テスラを支える「熱狂的なファン」の存在

テスラが驚異的なのは、出したモデルが着実にヒットしていることだ。それを支えているのが、熱狂的なファンである。その一端は貸借対照表にある「Customer Deposits」という項目からうかがえる。文字どおり顧客からの予約金のことで、19年12月末時点で7.2億ドル(約770億円)計上されている。

既存メーカーでも限定車などで予約金を取ることはあるが、レアケースだ。一方、テスラは予約金制度(モデルにより異なるが、モデル3なら1000ドル)を導入しており、新モデルの発表直後などには数年後の納入でも予約が殺到する。キャンセル可能とはいえ、予約金を払ってでもテスラ車に乗りたい消費者が大勢いるということだ。これによって生産計画が立てやすくなり、資金繰りも改善する。

もう1つ、テスラの追い風になってきたのが世界的な環境政策だ。環境に優しいとされるEVに対して、多くの国や自治体が補助金を用意しており、テスラもその恩恵を受けてきた。

加えて、米カリフォルニア州などは走行時に排ガスを出さない車(ZEV)を一定台数販売する義務を自動車メーカーに課している。規定台数に達しない会社は罰金を払うか、余分にZEVを販売した企業から排出権(クレジット)を購入しなければならない。

中国や欧州でも似た制度が導入されており、EV専業のテスラはこのクレジット販売で稼ぎまくっている。2020年4~6月期のクレジット収入は4.2億ドル。黒字化への大きな力となった。

さらには、前述のようについに大衆車市場にも攻めこむ。これで株価上昇にさらに弾みがつくかと思いきや、当日と翌日の2日で株価は15%落ち込んだ。過剰な期待を織り込んだ市場を満足させるのに十分な内容ではなかったのだ。

■テスラを待ち受ける険しい前途

このことはテスラが置かれた難しい立場を象徴している。これまでは将来のビジョンと革新性を示せば評価されたが、これからは実際に収益を上げることを求められる。4000億ドル近い時価総額を正当化するのは並大抵ではない。株式市場がテック企業として評価していたとしても、プラットフォームやデータで稼ぐ、乗数的に収益を増やす明確な道筋は示されていない。収益拡大にはEV販売を積み上げる必要がある。

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