テスラが危なっかしいのに抜群の期待集める訳 EVベンチャーの「死の谷」乗り越え新境地へ挑む

東洋経済オンライン / 2020年10月5日 7時20分

アメリカに続き、昨年12月末には中国・上海工場が稼働した。来夏には、独ベルリンに建設中の工場も竣工する予定だ。そうなれば年間の生産能力は100万台に達する。逆に言えば、それでもまだ100万台でしかない。販売台数増のために廉価モデルを増やしていけば、平均単価とともに1台当たりの利益額も低下が避けられない。熱狂的なファン以外にも顧客層が広がっていくため、性能や品質に対する消費者の視線も厳しくなっていくはずだ。

リスクを挙げれば切りがない。ただ、どんなリスクもテスラなら、いやマスク氏なら乗り越えてしまうと思わされるのも事実だ。

これまでも、苦戦したモデル3の米国での量産を陣頭指揮で突破。自動車生産で外資は現地企業との合弁しか認めてこなかった中国政府に、独資による進出を認めさせた。2018年にはツイッターで株式の非上場化を示唆する事件も起こしたが、ほかの経営者なら失脚するスキャンダルが彼にとっては致命傷にならない。

マスク氏の掲げるビジョンは「人類全体の持続可能性」。スペースXは地球だけにとどまらない未来のため。テスラは持続可能なエネルギー社会をつくるため。EVはそのピースの1つにすぎない。そうした壮大なビジョンに引き寄せられ、「マスク氏の下で働きたいと優秀な人材が集まってくる。他社で5年かかることが、テスラなら1年半で実現できる」(元テスラ幹部のカート・ケルティー氏)。

時価総額だけでなく収益力でもテスラがトヨタを超える日は来るのだろうか。

『週刊東洋経済』10月10日号(10月5日発売)の特集は「テスラvs.トヨタ」です。

山田 雄大:東洋経済 解説部コラムニスト

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