福島原発訴訟、国と東電が「全面敗訴」の衝撃 安全対策の不備を認定、福島全域が賠償対象に

東洋経済オンライン / 2020年10月8日 16時10分

9月30日に仙台高裁で判決が出た後、垂れ幕を掲げる原告ら(記者撮影)

仙台高等裁判所の法廷で9月30日、福島第一原子力発電所事故に関して国の損害賠償責任を認める全国で初めての二審判決が出た。

裁判長が判決の要旨を読み終わるや、傍聴席から拍手が沸き起こった。それからまもなくして裁判所の正門前で「勝訴」「再び国を断罪」「被害救済前進」と題した垂れ幕が掲げられると、待ち構えていた支援者から歓声が上がった。

支援者や原告らの前で中島孝原告団長は、「国の規制権限不行使をはっきりと断罪した。被害者がどんなに苦しんでいても一切関係ないと言い逃れを図ってきた国を厳しく追い込んだ判決だ」と言葉に力を込めた。

■「天王山」として注目された判決

今回の「『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟」(通称、生業訴訟)では、原発事故当時の原告の居住地は福島県のみならず、宮城県や栃木県、茨城県など広範囲に及ぶ。9月30日の判決を待ちわびた原告は約3650人にのぼる。

全国で約30件に及ぶ原発事故に関する集団訴訟の中でも生業所掌は最も原告数が多く、東電と国を相手取った判決内容はほかの訴訟の行方にも影響する可能性が高いことから、「天王山」と目されてきた。

生業訴訟は全国でも注目度の高い訴訟で、福島地裁での第一審判決に続き、控訴審である仙台高裁の判決では、国と東京電力を再び敗訴に追い込んだ。賠償額は10億1000万円と、第一審の5億円から倍増した。

判決文は本文だけでも500ページを超す。原発事故を引き起こした原子力事業者である東電のみならず、規制機関である国の責任についても詳細に検証したうえで丁寧に認定しているためだ。判決文には事故防止の努力を怠った国の責任について次のような記述がある。

「保安院(=旧原子力安全・保安院)の対応は(中略)、東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるをえない」

「一般に営利企業たる原子力事業者においては、利益を重視する余り、ややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから、規制当局としては原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ、安全寄りの指導、規制をしていくことが期待されていたというべきであって、上記対応は規制当局の姿勢として不十分なものであったとの批判を免れない」

このように、さまざまな検証を尽くしたうえで高裁判決は一審よりも踏み込み、国の責任について東電と同等に重いものがあると認定した。

■国と東電が問われた重い責任

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