「整備新幹線」、コロナで揺らぐ経済波及効果 過去の事例を参考にできない…地元は苦悩

東洋経済オンライン / 2020年10月11日 8時0分

福井県の敦賀駅付近の北陸新幹線建設現場=2020年9月(写真:敦賀市役所)

JR東日本は10月6日、東北新幹線・盛岡以北の最大速度を時速260kmから320kmにアップすると発表した。JR東日本の深澤祐二社長は、大幅な減収下でも、成長投資やイノベーション投資は減らさない方針を示していたが、現在の環境下で7年がかり、120億円の投資に踏み切ることは、北海道新幹線開業に向けての既定路線とはいえ、大きな決断だ。

■東北新幹線「5分短縮」の意味

120億円という投資は、ローカル線をいくつか、何年か支えられる金額かもしれない。また、「5分短縮」という効果だけ見れば、費用対効果への異論もあろう。それでも、八戸開業以前から進めてきた速度向上策の1ステップとみれば、意義は大きい。例えば、現在、最短2時間59分の東京―新青森間が、2002年八戸開業時点での東京―八戸間(2時間56分)より早くなる。2駅分、時間距離が近くなる格好だ。

むしろ、整備新幹線に立ちはだかってきた「260kmの壁」を取り払った影響が注目される。整備新幹線沿線は、建設費の地元負担、そして並行在来線の経営分離という大きな負荷と引き替えに新幹線を手にする一方、この上限に直面してきた。有形無形のルールで固められてきた「260kmの壁」を越える決断は、他の整備新幹線にも波及しかねない。

新型コロナウイルス感染拡大の影響による不確定要素があまりに多く、今回の判断の評価には、一定の時間が必要だろう。ただ、JR北海道やJR東日本の苦境で今まで以上に将来像が見えにくくなる中、「終点・札幌」への強い意志を感じる判断だった。

JR各社が築いてきた新幹線のビジネスモデルは根底から揺らぎかけている。

2021年3月期の連結業績予想でJR東日本は4180億円、JR西日本は2400億円、JR九州は284億円の最終赤字を見込む。一方、JR北海道は2020年4~6月期連結決算が126億円の最終赤字となった。JR北海道を除き、各社とも鉄道事業収入に占める新幹線収入の割合は高い。速く、大量に人を運ぶことを使命としてきた新幹線ネットワークの意義自体が問われつつある。

とはいえ、時計の針は後には戻らない。少なくとも開業スケジュールが決まった整備新幹線は粛々と準備が進む。長崎新幹線は2年後、2022年秋の開業が決まった。翌2023年春には北陸新幹線の敦賀延伸が控える。

そのとき、どんなビジネスモデルに基づき、どんなダイヤと料金を設定するのか、JR各社は悩みながら答えを探すことになろう。四国新幹線の構想や、山形新幹線のフル規格化や羽越新幹線の着工を求めている山形県など、関係する地元の動向も気がかりだ。

■「新幹線沿線」の模索

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