「学術会議問題」致命的に見落とされている視点 政治に調達されるネット空間、議論できない国
東洋経済オンライン / 2020年10月15日 19時0分
具体的には、大きくは特別の行政裁判所や憲法裁判所を創設したり、今回のような国家機関同士の争いを裁定する機関訴訟の形態をより広く法律で認めていったりする方法がある。また、司法的救済だけでなく、今回担保されなかった種々の説明責任を法的に義務付けることも考えうる。総理が推薦された候補者の任命を拒否する場合は国会あるいは何らかの場で理由を明らかにする義務を課すことや、学術会議からの推薦者が公的に意見を述べる場を任命前に担保し、任命プロセス(人事権の行使)の透明化(見える化)を法的に強制すればよい。これによって、上記民主主義にとっても、国民の判断にも資するだろう。
権力には常に不信の念をもって向き合わねばならない。権力が横暴をした場合、選挙で変えることは大切であるが、同時に、どんな権力でも強制的に従わせることのできるルールを今こそ「学術」の世界が知恵を出して考えるのが望ましいのである。
(4)学術会議の組織の意義という問題
最後に、せっかく問題になったのだから、学術会議の存在意義を再度「点検」すべきである。本当にここは「学問の国会」であり、学問の自由の庇護者なのか? 果たして、むしろ大学を含んだ「学会政治」の震源地となってはいないか? ともすれば、むしろ個々の研究者や大学の自治に対する脅威になっている側面はないか?
ここも、学問の自由の核心的な価値の重要性は前提にしつつ、忌憚なく議論するのが望ましく、安易な「民営化論」や、感情的な知性vs.反知性といった議論に飛びつかずに、真に社会や学問にとって意味ある機関とすべく知恵を出し合うべきである。
■学術会議問題でも有意義な議論を妨げた
上記のようなまったく独立した問題点および争点を整理することなく、学術会議問題は、これを擁護すれば政権派、反対すれば反政権派といった振り分け(ラベリング)が行われた。特に、ネット空間では、これが顕著であった。
筆者は、拙著『リベラルの敵はリベラルにあり』で、ネットは社会を分断するか、というテーマでこのことを論じた。ネットでは、特に政治的言論において、ほんの数パーセントの人たちの一方的かつ過激な言論が、言論マーケットの50%以上をシェアしているという、少ない人(声の大きい人)たちが言論の代表をしすぎてしまっている「過剰代表」状態を指摘した。
そしてまた、その過剰代表状態を、与野党問わず政治権力が「上顧客」として利用する構図が存在する。
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