待遇格差訴訟、最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず

東洋経済オンライン / 2020年10月20日 7時10分

10月15日、原告側全面勝訴の判決を受け、会見に臨む原告と弁護団(記者撮影)

「時代の扉が動く音が聞こえた。とてもうれしい判決です」――

10月15日、日本郵便の契約社員が年末年始の待遇や病気休暇、扶養手当などについて、正社員との格差是正を求めた3つの訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷は不合理な格差であり違法とし、争点となった5項目の支給をすべて認めた。

「画期的な勝利判決だ」「全国で苦しむ非正規の仲間たちも、この判決を胸に前進できる」。判決後の会見で、原告の契約社員たちは口々に喜びの声を上げた。

■手当不支給はすべて「不合理」

格差が不合理とされたのは、扶養手当、年末年始勤務手当、年始の祝日の割増賃金、夏期冬期休暇、有給の病気休暇の5項目。正社員には与えられるのに、契約社員にはいずれも与えられていなかった。

裁判は郵便配達業務などを担当する契約社員らが東京、大阪、佐賀の3地裁に起こした。これらの格差は労働契約法20条(現在のパートタイム・有期雇用労働法8条)が禁じる正社員と非正社員との「不合理な格差」に当たるかが争われ、下級審では判断が割れていた。

最高裁は2018年に同様の待遇格差を巡る訴訟で示した、賃金総額ではなく、賃金項目ごとに目的や趣旨を考え不合理か否かを個別に判断するとの基準を用いて、日本郵便の手当の中身を具体的に検討した。

その結果判決は、年末年始勤務手当は年賀状シーズンの最繁忙期に働いたことが支給要件で、その趣旨は契約社員にも当てはまると指摘。継続的な雇用を確保する目的があるとされた扶養手当も、継続的な勤務が見込まれる契約社員も対象になると判断した。

判決後の会見で、複数の原告から指摘されたのが、判決で支給が認められた有給の病気休暇の必要性だ。同社では正社員は1年目から90日の有給の病気休暇が与えられる一方、契約社員は何年働いても10日、しかも無給の休暇制度しかなかった。

「私が今回の裁判の中で、最もこだわったのが有給の病気休暇だ」。東京訴訟の原告、宇田川朝史さん(55)は語る。2008年に契約社員となり千葉県内の郵便局でゆうパックの集配に従事してきた。

ある時、同僚の契約社員が脳梗塞で倒れ、リハビリも実らず職場を去ることを余儀なくされた。「まじめに一生懸命働く人で仕事ぶりは正社員にも見劣りしなかったが、手当もなく治療費も苦しかっただろう。小さな子どももいる中、さぞかし無念だったはずだ」と宇田川さんは振り返る。「この時、有給の病気休暇は労働者にとって絶対に必要だと痛感した。だから今回、原告として立ち上がった」。

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