定年退職後も「現役気取りする」元部長のヤバさ 「独りよがりの正義を曲げない」男たちの迷走

東洋経済オンライン / 2020年10月25日 8時20分

正論おじさんに悩まされた、あるホテルの営業マンの嘆きとは(写真:8x10/PIXTA)

どんな小さなルールも厳守、強要し、まわりにいる人を辟易させる「正論おじさん」とは一体? 老人問題に詳しい林美保子氏による新書『ルポ 不機嫌な老人たち』より一部抜粋・再構成してお届けする。

2019年6月、朝のワイドショー番組で、「正論おじさん」なる人物が取り上げられ、話題になった。

関西の商店街で、自称・元官僚の高齢男性が毎日のように現れては、「歩道に私物を置く行為は法律違反で許されない」として、歩道にはみ出した看板や幟、自転車などを無断で店の中に押し込めていた。さすが法務省出身と言うべきか、1センチでもはみ出ていると許さないという徹底ぶりだった。

看板や幟も押し込まれてしまったおかげで遠目からは店が開いているようには見えず、売上が激減する事態にまで発展して、商店街の人たちを悩ませていたそうだ。

そもそもの発端は、歩道の点字ブロック上に物が置かれていたことだった。確かに、それは商店側が悪い。彼は警察に対応を求めたが動かなかったため、自分が法律に基づいて行っているのだそうだ。「歩道に物を置いてあると、年寄りには危ない」という正論おじさんの言い分もわかる。しかし、看板を蹴ったり壊したりするまでの権利は男性にはないはずだ。

■実に面倒くさい「正論おじさん」の恐怖

私のボランティア仲間にも、職務上法律に精通した人物がいた。彼は、「それは会則に書かれていない。その話を進めるならば新たな会則を設けるべきだ」などと、何かと言えば会則を持ち出しては、周囲をうんざりさせた。

確かに骨組み的なものには会則が必要ではあるが、彼は、「そこまではいらないでしょう」ということまで、会則を持ち出してくる。会則のがんじがらめになりそうで、実に面倒くさい。「私は、法律に詳しい」というプライドが言葉の端々に見え隠れする。しかし、彼の素晴らしい知識と経験を活かすには、残念ながらボランティアの場は役不足だ。

正論おじさんは自分なりの信念でやっている。ボランティア仲間の男性も大真面目だ。しかし、「1センチでも許さない」とか、「何でも会則に基づいて」と理論武装されると、周囲は辟易するだけだ。傍目から見れば、空回りしているようにも見える。

ホテルで営業を担当している坂本潔さん(57歳・仮名)は、数年前、強烈な個性の顧客を持ったことがある。宴会や会議用に宴会場を定期的に利用してくれている会社の窓口となっていたのが、総務部長の梶光彦さん(59歳・仮名)だった。

■誰も抵抗できないゴリ押しおじさん

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