日本人は宇宙の国家的な重要性をわかってない 市場・戦場化する中で強化を図る必要がある

東洋経済オンライン / 2020年10月26日 8時10分

まず、宇宙空間の探査および利用は全人類に認められた自由な活動であり、月その他の天体を含む宇宙空間はいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない(宇宙条約)。だが、衛星軌道は既に混雑し、月の資源や将来的な基地建設用地の占有を巡る競争が現実化している。

前述のSpaceX社は衛星インターネット網を構築する小型衛星を既に833基軌道に配置しているが、将来的には4万2000基に増加させ地球上の全地域をカバーするとしている。中国は、途上国の衛星事業をまるごと請け負って発注国に対する技術的・経済的影響力を確保するという手法で、アフリカや南米に「宇宙情報コリドー」を広げている。宇宙は地上の経済活動と密接に結びつき市場化しているが、その競争を管理・規制する秩序の構築は未整備である。

■宇宙の活動は本来的に軍民両用

第2の問題は、宇宙の活動が本来的に軍民両用であるという特質に由来する。軍事目的で開発されたアメリカのGPSが広く民間利用されているとおり、中国北斗GNSSも軍事利用される。もともと、中国が独自に北斗を構築したのは、米GPSに依存する軍事の脆弱性の克服が主目的であり、米中デカップリングの実例である。中国は世界初の量子科学衛星「墨子」を軌道に投入し地上との量子暗号のデリバリーに成功、また「嫦娥4号」は初めて月の裏側に軟着陸を成功させ、最終的には月に有人基地の建設を目指すという。

いずれも軍事的インプリケーションは極めて大きい。各国は他国の衛星を妨害、盗聴、破壊するなどの機能を持つASAT衛星を打ち上げているが、日本の「はやぶさ」の試料採取技術がそのままASATに応用できるように、軍民の弁別は難しい。従って、ASAT衛星の国際的な規制や軍備管理の枠組みを設けるためにも衛星利用の透明性を確保することが必要であり、宇宙状況監視(SSA)が重視されるゆえんでもある。

最後に、宇宙の安定利用を阻害するさまざまなリスクの顕在化がある。宇宙デブリや衛星同士の衝突による事故に加え、衛星と地上局の通信リンクを狙うサイバー攻撃の事例が既に起きている。実際、宇宙とサイバー領域は密接にリンクしており、将来的には正体不明の衛星へのランサム攻撃も予想される。

アメリカ空軍は、ハッカーとセキュリティ研究者を募り、敵が悪用しうるバグや欠陥を見つけるHack-a-Satというプログラムを設け、コンテストを計画している(コロナ禍で延期)。多様化するリスクの予防と被害局限、主体の特定(Attribution)や責任追及、損害補償などの仕組みは早急に必要だ。

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