日本人は宇宙の国家的な重要性をわかってない 市場・戦場化する中で強化を図る必要がある
東洋経済オンライン / 2020年10月26日 8時10分
宇宙における活動はかつてない速度と規模で拡大し、地政学的・地経学的なリスクが高まりつつあるが、宇宙の秩序を規定する国際条約等は驚くほど少なく、古い。最も基本となる宇宙条約は1967年、その他の条約・国連原則等も2000年代以前に施行されたものが大半である。冷戦時代は米ソともに衛星には手を出さないという暗黙の了解があり、米ソ以外に宇宙活動を展開できる国は実質無かった。宇宙は平和で安定していた。
軍民融合を掲げる中国が米ロを凌駕するロケットを打ち上げ、ASAT能力を保持するに至り、宇宙のパワーバランスは大きく変わった。同時に、欧米の軍と官が主体であった宇宙活動は民間主体に移行し、SpaceXに象徴されるとおり、この傾向はますます強まっている。この国家間及び官民間のパワーシフトに国際秩序は追いついておらず、中国がその間隙をついて既成事実を積み上げている。
日本はさまざまな制約を克服しつつ独自の宇宙技術を開発し、国際宇宙ステーション等、国際的な事業にも関与してきた実績がある。大国間競争に関して宇宙は最前線であり、日本は欧米諸国とともに包括的な地政学・地経学の視点で宇宙の平和利用2.0の秩序構築に指導力を発揮するのが望ましい。
■産業と安全保障の強靭な共生関係の構築
国内的には、宇宙産業の発展が宇宙における防衛力を高め、防衛省等をユーザーとして宇宙・防衛産業がまた伸びるというエコシステムの構築が課題だ。宇宙資源の所有権に関する国内法の整備の動きがあるが、民間参入のリスクを軽減しインセンティブを高める幅広い措置を期待する。
鍵は、民生品の活用による競争力の強化と民間需要の創出であり、無償の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」や準天頂衛星の利用拡大等による新たな市場開拓である。また、参加を決めているアメリカ主導の「アルテミス計画」を軸に、国際協力と官民協業の実績を積み上げる意義は大きい。
宇宙基本計画は日本が取り組むべき宇宙活動の課題と事業を包括的・具体的に提示している。問題は、スピード感、スケール感を持った計画の実行である。防衛省とJAXAそして潜在的なベンチャーも含む民間企業の関係を強化し、アメリカ等と連携した宇宙のプロトコル作りを実現するには、宇宙開発戦略本部の大国間競争の最前線に立つ意識と戦略が求められている。
(尾上 定正/アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー、元空将)
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