JR東海と県の対立をあおる「静岡新聞」への疑問 大井川流域で圧倒的存在感、住民への影響力大

東洋経済オンライン / 2020年11月5日 7時40分

国交省で開かれた第6回リニア有識者会議。静岡県の難波喬司副知事も出席した(国土交通省提供)

国土交通省のリニア有識者会議が10月27日に開かれ、JR東海は当日の会議テーマとかけ離れた、「大井川直下の南アルプストンネル掘削工事で大量湧水の可能性は小さい」などと説明した資料を提出した。専門家から異論、反論はまったく出ず、JR東海の主張がそのまま受け入れられた。

会議終了後の会見で、静岡新聞は有識者会議の結論にかみつき、国、JR東海へ何度も疑問を投げかけた。これまで同紙はJR東海の非公表資料を元に「大井川直下の大量湧水の懸念」を繰り返し報道、これに応える形で川勝平太静岡県知事は資料の公開を要求、“連携作戦”を展開していた。

JR東海は専門性の高い基礎データであり、住民らに不安を与えると公表を差し控えていた。有識者会議の翌日の新聞各紙の紙面を見ると、ほとんどの新聞が「中下流域の地下水への影響は極めて小さい」という有識者会議の結論を報じていたにもかかわらず、静岡新聞朝刊は「地質議論深まらず」と会議の結論を無視した。これでは流域住民の不安は解消されず、リニア問題解決の妨げになるだろう。

■スクープ仕立ての記事

JR東海の言う基礎データとは、トンネル建設で大井川の流量減少を毎秒2トンと推定した調査報告資料。県から「毎秒2トン減少」の根拠を示すよう求められたため、2018年10月、地質調査、ボーリング調査結果、地表踏査や水収支解析などに使った膨大な基礎データ54冊を段ボール14箱に詰めて、県に8カ月間、貸し出した。

その中の1つが、南アルプスの地質調査データを示した大開き1枚の断面図で、注釈として数多くの「コメント」が付けられていた。

静岡新聞は、その「コメント」の一つを写真撮影、『大井川直下「大量湧水の懸念」 JRの非公表資料に明記』の1面トップ記事を9月10日付で掲載した。『JR東海の非公表資料が存在することが、9日までにわかった』と、まるでJR東海が隠していた資料を入手したかのようなスクープ仕立てとした。

記事は、大井川直下の断層について、「東俣から涵養された地下水が大量に賦存(潜在的に存在)している可能性があり、高圧大量湧水の発生が懸念される」と問題視し、「大井川直下の地質を重点的に調べるボーリングの追加調査は必須」と解説した。大見出しで「大量湧水の懸念」を強調したから、流域住民らに与えたインパクトは非常に大きかった。

9月23日会見で川勝知事は、この記事に触れ、「そんな事実があったのかと驚いた。(JR東海は)資料を公開していない。非常に不愉快だ」などと強く批判した。県はJR東海に一般公開するよう求めたが、10月8日にJR東海は流域住民に不安を与えるとして「公開は適当ではない」と回答した。知事は会見で「南アルプスに関わる。当然知る権利がある」などと強調、改めて公開を求めた。テレビ、新聞各社は「JR、資料公開拒否」などと伝えたから、JR東海の「流域住民に不安を与える」の真意は伝わらなかった。

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