いまだ不透明「本当の保育士給与」問題の深刻 「保育の質」に結び付く重要な課題だ

東洋経済オンライン / 2020年11月24日 11時0分

保育士たちが声をあげるためにも、処遇の「見える化」は必要不可欠だ(写真:Graphs/PIXTA)

新型コロナウイルス禍のなかで保育士の休業補償が不当にカットされたことを機に、国が事業者に対して強く是正を求める姿勢を示した。これまで行政が手をつけられないでいた保育士の賃金に関する行政指導の期待が高まっている。

保育園の運営費は地域区分で単価が決められており、当然、そのなかには保育士の年収が積算されている。しかしその詳細は、一般には見えにくく、保育士たちにもわかりにくいものになっている。

日本で働く多くの保育士の賃金は到底、高いとは言えない。保育士たちが自ら待遇が不当だと声をあげるためにも、保育士の処遇の「見える化」は必要不可欠だ。それには、地域区分ごとの年収を国が公開することがカギになる。

保育士が十分な賃金を得ることは、保育の質の向上という形で、保育を受ける子どもたちやその保護者にとって大きなプラスになるはずだ。

■保育現場から聞こえてくる「叫び」

「長時間労働で心身ともに限界。給与も決して高いわけではない」

東京23区内で株式会社が運営する認可保育園で働く保育士Aさん(仮名、30代半ば)が嘆く。副主任のAさんは中堅保育士として、後輩の教育係も務めている。国をあげての保育士の処遇改善が行われているが、年収は370万円程度でしかない。

「公然と消える『保育士給与』ありえないカラクリ」で試算したように、理論上、Aさんは年収465万円に加え、東京都独自の処遇改善(月4万4000円)をもらっていてもいいはずだ。

保育士の人数が、国や自治体が規定する配置基準ギリギリしかいないため、少し体調が悪くても休めない。1日12~14時間労働もザラだといい、終電で帰宅することもしばしばだ。事業者は次々に新しい保育園を作っている。Aさんは「人件費を削って施設整備に回しているのだろう。国から処遇改善費が入るのに私たちの賃金が低いのは、基本給や賞与が削られて処遇改善費を充てているのではないか」という疑問を持った。

Aさんは「園児の折り紙代まで削られ、1日2枚しか使わせてあげられない。経営者は、保育なんて二の次で子どもをみていない」と憤る。

東京と隣接する埼玉県で株式会社が運営する保育園で働くBさん(仮名、30代後半)も、決して好待遇とはいえない。Bさんは園長のため年収は400万円ほどだが、クラスを受け持つ保育士の月給は手取り16万7000円。賞与の規定がなく夏はゼロ、冬も不支給であれば年収は280万円しかない。同園も次々に保育園を作り、満足に玩具を買えるだけの費用を渡されない状況だという。Bさんは「社長は給与が相場並みだというが、よくわからない」と首をかしげる。

■事業者や地域によって出る賃金格差

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