バイデン政権にアジア政策転換が求められる訳 米国は新たなリバランシング戦略を追求せよ
東洋経済オンライン / 2020年12月28日 8時30分
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
■バイデン次期政権はアジア重視の方向
アメリカのバイデン次期政権は同盟重視とともにアジア重視を打ち出すことになりそうである。バイデンは、「アメリカはれっきとした太平洋国家であり続けてきたし、いまもそうだし、これからもそれは変わらない」と述べている。アメリカはアジア太平洋におけるプレゼンスを今後とも維持する、そして西太平洋を拠点とする前方展開と戦力投射の能力を弱めることはないとの意思表示である。
また、次期政権で国務長官就任が予定されているトニー・ブリンケンは「バイデン大統領は、ASEANの会合にはちゃんと顔を出す」と発言している。トランプ大統領がASEANを中核とする東アジアサミットに任期中、一度も出席しなかったことを念頭に置いての発言と受け止められている。
政権移行チームの中には、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)にアジア担当統括官(ツァー)を置くべきだとの構想があるとの報道もある。アジアを中国、インド、日本をはじめとする同盟国・友好国の3つの部門に分け、その全体を統括する戦略司令塔が必要との認識のようである。
トランプ政権の4年間、アメリカはアジア太平洋の新たな地域アーキテクチャー構築の歩みから取り残された。政権発足直後、この地域の12カ国の多角的な自由貿易推進の枠組みであるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から一方的に撤退することを宣言した。政権末期、日中韓を含むアジア15カ国によるRCEP(地域的な包括的経済連携協定)の締結をアメリカは指をくわえて見守るしかなかった。アメリカ抜きのアジアだけの地域的連携が中国主導で進むのではないか、と懸念する声もワシントンでは聞かれる。
実際のところ、アジアはアメリカがアジアに参画できないからといってアメリカを待つことはない。アジアは世界1位(中国)、2位(インド)、4位(インドネシア)の人口大国を抱え、世界でもっとも躍動的に発展する経済を擁し――ASEANは2030年までに日本を抜いて世界第4位の経済規模となる――、もっとも上昇志向の強い中産階級を育て、もっとも分厚い貯蓄を持ち、世界の工場から世界のイノベーション・センターへとのし上がりつつある。
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