バイデン政権にアジア政策転換が求められる訳 米国は新たなリバランシング戦略を追求せよ

東洋経済オンライン / 2020年12月28日 8時30分

なぜ、オバマ・リバランシングは成功しなかったのか。

まず、アジア全体の戦略を作る前に米中関係の枠組みづくりに傾斜し、アジア政策を対中政策の枠組みの中に組み込もうとしたためである。国防総省の“ピボット”指針表明の1カ月後、中国は米中の「新式の大国関係」構想をアメリカに提案した。その内実は、米中間のこの地域における“新式の勢力圏棲み分け”を隠れた意図とするものだったが、オバマ政権は、一時、それにはまりかけた。

次に、2012年からのフィリピンのスカーボロー礁をめぐるフィリピンと中国の領有権紛争に関して結果的に中国の占拠を許したことである。アメリカは、その後の南沙諸島で人工島や軍事施設などの建設を進める中国の修正主義的行動も制止できなかった。それは、アメリカの抑止力とクレディビリティへの疑問を深めることになった。

それから、リーマンショック後の中国国内のアメリカ衰退論の浸透と中国の覇権的野心(「中国の夢」)の地政学的リスクとAIや5Gをはじめとするハイテクとサイバー・パワーの大躍進と経済力を武器化する地経学的挑戦の脅威を認識するのが遅れた。

そして、グローバル化と第4次産業革命の国内産業と経済社会への負荷とそれに伴うポピュリズムの噴出と政治分断への対応も不十分だった。オバマ政権はTPP交渉をまとめ上げたにもかかわらずそれを批准できなかった。2016年の大統領選挙では共和党のトランプだけでなく民主党もヒラリー・クリントンはじめ4人の候補全員がTPPに反対した。

バイデン次期政権はオバマ政権のリバランシングの失敗を検証し、それを踏まえた新たなリバランシング戦略を打ち出すべきである。

今回、何よりも求められるのは、アジア太平洋地域における包括的かつ多角的な貿易政策を確立することである。アメリカの国益は関税ではなくルール(法の支配)とルールに基づいたビジネス標準の確立にある。アジア太平洋における貿易と投資は中国がもっとも競争優位を持っている分野であり、アメリカの多角的政策関与が遅れるほど中国を利する。

バイデンは7年前の夏、シンガポールにおける安倍晋三首相(当時)との会談で、リバランシング政策を成功させるためには日本の戦略的役割の重要性を強調し、その観点からTPPの交渉を重視していると述べた。バイデン政権は貿易政策に関して、労組の保護主義ともトランプの「アメリカ・ファースト」とも異なるナラティブを用意しなければならない。

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