名将エディーが難敵に仕掛けた壮絶な"心理戦" 「やるかやらないか」それが問題だ

東洋経済オンライン / 2020年12月28日 15時30分

ラグビー元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが勝利に貢献するために使う心理戦とはどのようなものでしょうか(写真:Stu Forster/Getty Images)

ラグビー元日本代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ。日本を離れてからはイングランドへ。同代表を率いて昨年のワールドカップでは準優勝。準決勝では優勝候補筆頭のニュージーランド「オールブラックス」に完勝した。そこで仕掛けられた壮絶な心理戦とは。新刊『プレッシャーの力』から抜粋・編集してお届けする。

■試合中に「愛してるよ」とつぶやいたワケ

ラグビーというゲームで私は心理学をよく使う。これは選手時代からの習慣だ。

背も低く体が小さかったが、それを理由に選手になることを諦めたくなかった。ラグビーは、激しいコンタクトプレーが連続するスポーツ。体格差は大きなハンデだったが、ほかの要素でチームに貢献しようと考え、努力した。試合の流れを読む、連携プレーのサポート、そして相手に精神的なプレッシャーを与えることだ。

「ラグビーは紳士のスポーツ」と日本では言われている。しかし当時オーストラリアのラグビー界では、グラウンド上で選手が互いに激しい言葉を浴びせる光景は珍しくなかった。相手をいら立たせ、冷静さを失わせることが勝利につながるのであれば、やらないという選択肢はない。そういった雰囲気があった。

ある試合で、フッカーというスクラムを最前線で組むポジションで出場していた私は、スクラムを組む直前に相手のプロップの選手の頬にキスをし、「愛してるよ」とつぶやいた。

相手選手は予想もしていなかった私の言動に驚き、スクラムを妙な体勢で組んでしまった。プロップはスクラムを支える柱だ。そこをへし折ったことで勝負は一気に優位にすすみ、楽に相手を押し込むことができた。さらにその後試合中、スクラムを組む度にこの選手に向かって微笑み、時にはウィンクをしてみせたりもした。この相手は試合を通して、明らかに私とスクラムを組むことを嫌がっていた。

おかしな例だが、相手の精神状態を乱す小技とは、こういうものだ。

試合中のこうした小さな揺さぶりが、どれだけ勝利に貢献するかを測る術はない。だが、どんな小さなことでも、戦いに勝つためにやれることはすべてやる。それが私の哲学だ。もちろん、ルールの範囲内であるということは言うまでもない。

こうした小技に相手が反応しなければ、それはそれで別に構わない。自分たちの仕掛けに相手がどういう反応をするかは、相手次第。だが、こうした細かい揺さぶりを使ってまでも勝利に向かって戦う姿勢を見せるかどうかは、自分たち次第である。

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