日本人女性が韓国で自前のビルを持てた秘訣 在韓17年で資産70倍増、居酒屋店主の成功物語

東洋経済オンライン / 2020年12月30日 10時0分

ソウルで自前のビルを建設、居酒屋を開いた松本ひとみさん(撮影:黒田勝弘)

日本と韓国のビジネス関係は広くて深い。それなのに、ソウルにはこれまで日本企業の自社ビルは1つもなかった。面倒な歴史的背景もあり、韓国で日本人が不動産を所有することは何かと不便だったからだ。それが2019年になって初めて、日本企業の東レがソウル・金浦空港近くのニュー・ビジネスタウンに8階建ての自社ビルを建てた。1965年の日韓国交正常化以降、史上初のことである。

■日本人の不動産所有が難しかった韓国

先端素材系の東レは近年、韓国で最も歓迎されている日本企業だが、大企業でも自社ビルを持つのはこれほどごく最近のことだった。ところが2020年に女手一つでソウル都心にビルを建てた日本女性がいる。在韓日本人女性で最大のサクセスストーリーの主人公になったのは、大阪出身で日本居酒屋「とんあり」の経営者である松本ひとみさん(63)だ。

「とんあり」は、ソウル駐在日本人ビジネスマンの間ではよく知られているお店の一つだ。松本さんは20年前に脱OLし、退職金1000万円を持って韓国にやってきた。韓国でしばしば噴出する反日運動による関係悪化をものともせず、一人で店を増やしながら事業を拡大し、ついに時価7億円の自分のビルを持つに至った。17年間で70倍に増やしたことになる。この快挙は、コロナ禍の下で過ごすソウル在住日本人の間で「元気をもらった」として明るい話題となっている。

住居を兼ねた新しい居酒屋ビル「とんあり」は、ソウル都心の一等地・貞洞(チョンドン)にある。ソウル市庁前、日本人観光客もよく訪れる古宮・徳寿宮裏手の歴史的に由緒の深い地域だ。李朝、大韓帝国時代の韓国開化期には外交街で知られ、今でも周辺にはイギリスやロシア、カナダなどの各国大使館やアメリカ大使公邸がある。一時は、日本大使館の移転先候補にもなったほどの場所だ。そのカナダ大使館の斜め向かいの路地に、しゃれた赤レンガ造りの5階建ての「とんあり」が見える。

松本さんは2002年、45歳の時に1年間の語学留学を経験した。翌2003年に留学先の延世大学が近い学生街の新村(シンチョン)の路地裏に「とんあり」をオープンした。小さな5階建て雑居ビルの3階で、1階は焼肉屋、2階には韓国では珍しいレズビアンが集まるバーが入っていた。

屋号の「とんあり」とは、韓国語で大学の「サークル」や「仲間」といった意味で、それを日本語のひらがなで記して店先に掲げた。日本人の留学生をアルバイトで雇い、料理は「日本の家庭料理」と称して自分がつくった。

■高額家賃でも店舗移転した決断が奏功

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