マンション・戸建て「コロナ特需」のカラクリ 不況恐れた業界の予想は良い意味で裏切られた

東洋経済オンライン / 2021年1月12日 7時50分

コロナ禍で需要が落ち込むという見方もあったが……(デザイン:杉山 未記)

「今日もヘトヘトです。予約がひっ切りなしに入っていて、残業をしながら接客しています」。 

東京都内で新築マンションを販売する営業員は、疲れながらも満足げな表情を見せる。

この状況を誰が予想できただろうか。2020年4月の緊急事態宣言発令前後、住宅業界は未曽有の事態に見舞われた。多くのデベロッパーがモデルルームや仲介店舗の閉鎖を余儀なくされ、現地への内見もはばかられるなど住宅の販売が困難な状況に追い込まれた。

■2020年夏以降、新築マンション販売がV字回復

不動産経済研究所によれば、同月の首都圏新築マンション供給戸数は686戸と過去最少を記録した。中古の成約件数もマンションが前年同月比52%減、戸建てが41.5%減に縮小。市場の「凍結」を目の当たりにした業界は、住宅不況の到来に身構えた。

ところが、業界の懸念は良い意味で裏切られた。営業を本格的に再開した7月以降、販売がV字回復を果たしたのだ。「夏枯れ」と呼ばれる8月に入っても勢いは衰えず、賑わいは現在も続いている。

『週刊東洋経済』1月12日発売号は「激動 マンション・住宅」を特集。誰も予想しなかった「コロナ特需」や、いま注目されるエリアと駅のほか、不動産投資の最新事情などを追っている。

2020年11月に三井不動産レジデンシャルが販売したタワーマンション「パークタワー勝どき」(東京・中央区)は、販売住戸237戸に対して約650件もの申込みが入った。中でも1億2890万円の住戸には、27倍もの購入希望者が殺到した。

購入者の背中を押した背景には、「巣ごもり」の中で溜まった自宅への不満がある。日がな1日自宅にこもっていると、広い部屋や便利な住宅設備が欲しくなる。学校が休校になり暇を持て余した子どもが自宅で遊ぶ中、騒音や振動が近所迷惑にならないかも気がかりだ。グーグル検索では、緊急事態発出前後から「書斎」や「騒音」の検索数が急増した。

住宅の需給バランスも活況を演出する。2020年の首都圏新築マンション供給戸数は2万強と、モデルルームの閉鎖を受けて例年の3万戸水準を大きく下回る見込みで、限られた新築物件に申し込みが集中している。需要旺盛な中古物件も「今は売り時でない」と考えた持ち家の買い替え層が売り出しを控えたこともあり、在庫は減少の一途をたどる。

■十分な在庫の確保が難しくなりつつある

逼迫しているのはマンションだけではない。横浜市地盤のハウスメーカー「ピーアイコーポレーション」の折田浩一代表取締役は、「子供がいない世帯でも戸建てを求めるほど引き合いは強いが、販売できる物件が少ない」と話す。緊急事態宣言前後に用地取得を一時見合わせたため、購入希望に対して十分な在庫の確保が難しくなりつつあるという。用地取得は夏以降に再開したが、引き渡しが可能な物件が増えるのは「2021年春以降になるだろう」(折田代表)。
 
むろん、コロナ禍は雇用や所得を蝕んでおり、誰もが住宅購入に動けるわけではない。それでも、金融業やIT企業など所得が高く、在宅勤務への移行も早い業種への影響は比較的軽微だ。住宅市場の活況は、所得や雇用への不安を払拭できるこうした業種の従事者による需要膨張によって支えられている。

住宅ローン金利はコロナ禍後も低水準で推移し、今や変動金利ならネット銀行では0.4%台の商品も登場。住宅金融支援機構が2020年7~9月に行った「住宅ローン貸出動向調査」によれば、金融機関の71%が「今後も住宅ローンの新規貸し出しに積極的だ」と答え、貸し渋りの気配もない。

予想外の快走で幕を開けた、住宅業界のニューノーマル。2度目の緊急事態宣言発出という状況下、住宅市場は新たな局面を迎えている。

『週刊東洋経済』2021年1月16日号(1月12日発売)の特集は「激動 マンション・住宅」です。

一井 純:東洋経済 記者

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