元ヤフトピ編集長が語る「勝つメディアの条件」 「いいものを書けば売れる」は昔から幻想
東洋経済オンライン / 2021年1月15日 14時0分
アップルのiPhoneが日本で発売され、スマートフォン時代が本格的に到来してから10年あまり経ちます。その間にニュースの舞台はアナログからデジタルへ移行し、2021年も新たな動きが出てきそうです。これからニュースメディアはどうなっていくのでしょうか。元読売新聞記者で、ヤフージャパン時代には「Yahoo!ニュース(以下、ヤフーニュース)」の立ち上げに携わり、ヤフー・トピックス編集長として、ヤフーニュースを日本最大級のニュースサイトに育てた経験を持つ、東京都市大学メディア情報学部教授の奥村倫弘氏が解説します。
■読売新聞がスマホアプリを出した狙い
「2020年、ニュースメディアにどんな注目すべき動きがあったのか」と問われると、劇的な動きはありませんでした。何かが新しく動き始めたというのも特に思いつきません。他方で、テレビや新聞といった「伝統メディア」が、少しずつ動き始めた印象です。
新聞業界で注目したのは読売新聞です。2020年7月にスマートフォン用アプリ「読売新聞オンライン」を公開しました。面白いのは、先行してアプリ展開をしている日本経済新聞や朝日新聞とは異なり、自宅などで紙を定期購読していないと、読売アプリでデジタルコンテンツの全文が読めない点です。
日経や朝日などは「紙は1つのオプション。新聞のデジタル展開に紙は要らない。双方を必ずしもセットにする必要はない」という戦略ですが、その常識を覆したのではないでしょうか。
読売新聞の紙の購読者は推定約700万人。紙を取っている人がアプリをダウンロードしていけば、それだけでアプリのインストール数が一定数取れる。新しく顧客を開拓するのではなく、逆に、これまでの読者にアプリをインストールさせればいいという戦略ではないか、と思います。
自社アプリのダウンロード数は、先行する日経が約70万、朝日が約30万といわれています。仮に読売新聞アプリのダウンロード数が、定期購読者の1割にとどまったとしても約70万です。しかも、アプリでの課金はありませんから、ダウンロードを誘う環境は悪くない。
読売新聞の狙いは、ネット単体で収益を上げるより、最終的には残存者利益を取ることにあると感じています。ライバルの新聞社が破綻した際、読売新聞はその読者を獲得しようと準備しているのではないでしょうか。新聞業界で確固たる地位を維持し続けたいという考え方です。紙ありきの会社ですので、アプリはあくまで紙の販売戦略の一助だと思います。
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