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北海道のTVマンが記した「デス・ゾーン」の真意 開高健ノンフィクション賞・河野啓氏に聞く

東洋経済オンライン / 2021年1月17日 15時0分

――その量ですか。

量もそうですが、山の中で叫んだりもがいている。登山の過程を詳細にカメラで撮っていて、自分が泣く顔までも。いまのユーチューバーの先駆けのようなことをしていたんですよね。正直、これは取り上げないともったいないぞ、と思いました。

――河野さんが栗城さんを取材し始めた2008年当時、他のテレビはまだ注目していなかったのでしょうか。

日本テレビさんが前年にネット配信で取り上げていたのと、北海道文化放送さんが1時間番組をやっていたんですが、私はどちらも見ていなかった。会って、これは競って飛びつくだろうから、どこよりも先に番組にさせてほしいと申し込み、了解を得ました。

■彼が何者だったのかを知りたくなった

――本書がノンフィクションとして独特なのは、卓抜したエリートを称揚するものではない。前半はむしろ栗城さんのダメな一面、わたしたちと変わらない一面が描かれ、彼の頑張らなさ加減に「おいおい」とツッコミながら読みました。だけども不思議と読み進むうち、栗城さんに親密な感情を抱きはじめ、端的にいうと好きになっている。そして、なぜ両手の指を欠きながらも、まだ彼が山に登りつづけたのか、知りたくなるんですね。

河野さんは本にも書かれていますが、一度は2年にわたり時間を共有しながら、あることから交流を断たれている。関係が途切れた後に再度取材するというのはゼロスタートより大変だったと推量しますが、本書の執筆動機は何だったのでしょうか。

一番の理由は、彼が何者だったのかを知りたくなった。亡くなったというのを知ったときに、山で死ぬなんて、まるで登山家みたいじゃないかと思ったんです。

指を9本凍傷で失くしたというのはニュースで知ってはいました。これで山には登らないだろうと思い、フォローもしなかったのが突然、滑落死したという。まだ登り続けていたのかというのがそのときの正直な気持ちで。何故登り続けていたのか。その謎をメディアの誰かが解いてくれていたら、僕は取材する気も起きなかったんだろうけど、メディアが伝えたのはお悔やみの言葉ばかり。(登山家たちからは実力不足といわれながらも)なぜ彼は8回もエベレストに挑みつづけたのか。知りたかったというのが最大の動機です。

――丁寧に数多くの人に話を聞くために訪ね歩いておられます。当人が亡くなっている以上それ以外に方法はなかったのでしょうけど、取材のブランクが10年もあっただけに大変だったのではないですか。

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