北海道のTVマンが記した「デス・ゾーン」の真意 開高健ノンフィクション賞・河野啓氏に聞く
東洋経済オンライン / 2021年1月17日 15時0分
たしかに。縁が切れてからは、たまにテレビで目にすることはあっても心は動かなくなっていました。なぜ心が離れたかという理由は本の中に書いたとおりなんですが。大事な約束を反故にする。こんなやつ、もう追っても仕方ない。頭の中からスッパリ削除してしまった。だから、またデータを取り出すことになろうとは思わなかったですね。
しかし大変ではありましたが、彼が僕と別れたあと、どのような人生を歩んだのか知りたいという気持ちが上回った。それと、これは偶然なんですが、彼が亡くなった翌月からブログを始めたんです。仕事の裏話のようなことだったんですが、熱心な読者は母親ひとりだけ。登録者は10人もなかったのが、ふと栗城さんのことを書きたくなった。そうしたらアクセス数が1万に跳ね上がったんです。その驚きもありました。
■表現の面ではとてもストイックな人間だった
――本を読んでいて、河野さんと栗城さんに似通ったものを感じとりました。たとえば、お母さんが亡くられたとたん河野さんはブログを更新する意欲を失ったとつづられていて、いっぽう栗城さんは「カメラがなければ、エベレストには行かない」と語っている。
大勢の観客を強く意識した登山と、たった一人の読者に向けた違いはあるにしても、ある意味符合するというか。栗城さんは「夢の共有」という言葉をよく使われていたそうですが、誰かに見られていることを意識することで人は前に進むことができる。それは誰しもに当てはまることだと思いますが。
私と母の関係でいうと、50代の息子と80代の母親との間に会話は成り立たないんですよね。すくなくともウチの場合は。母が死んだあとにあらためて感じたことですが、母が本当に喜んで読んでくれていて、僕と母との会話ツールとしては役立った。
では、栗城さんはいったい誰を意識して山に登っていたのか。誰かのために登っていたのは確実だったと思います。そうでないと、あんなに登山の力量が未熟な人が、たとえシェルパの助けを借りたとはいえエベレストには行けなかったでしょう。
――人物取材をする場合、対象に対する「共感」が欠かせないと思うのですが、栗城さんの負の一面を描写しながらも文章から愛情のようなものを感じました。彼と自分に類似するものを感じることはありましたか。
そうですね。まず似てないのは、ぜったい僕は自分の泣き顔にカメラを向けることはしない。どんなにそれがウケると計算できたとしても、それはできない。それで、質問は似ている部分ですよね。
この記事に関連するニュース
-
「FUJI & SUN ‘21」ライブタイムテーブルを発表!
PR TIMES / 2021年4月14日 17時45分
-
水も電気もない。富士山頂で働くってどんな感じ?
lifehacker / 2021年4月7日 11時0分
-
甲子園を奪われた2020年の高校球児に密着。作家・早見和真が見た世界
日刊SPA! / 2021年3月30日 15時51分
-
【佐々木俊尚コラム:ドキュメンタリーの時代】「僕が跳びはねる理由」
映画.com / 2021年3月24日 14時0分
-
待望の新作始動!『ヤマノススメ Next Summit』製作決定!!ビジュアル公開
マイナビニュース / 2021年3月19日 12時0分
ランキング
-
1Windows 10を指定した時間にシャットダウンさせる方法2つ
lifehacker / 2021年4月15日 16時30分
-
2「コロナ対策にも有用」牛乳を飲むなら6種類のうちどれを選べばいいか
プレジデントオンライン / 2021年4月16日 9時15分
-
3「銭」との読み間違いに注意!「餞」の読み方、知っていますか?
OTONA SALONE / 2021年4月16日 11時30分
-
4「あなたも略奪したじゃない」… “彼を奪い取った女性”が見た地獄とは
ananweb / 2021年4月15日 20時45分
-
5最先端×高性能の「KF94マスク」って知ってる?韓国で人気のマスクがSNSを中心に日本でも話題なんです
isuta / 2021年4月15日 20時0分