国の責任問う原発訴訟、「本丸」高裁判決の行方 判決次第では、国の原発政策は行き詰まりも
東洋経済オンライン / 2021年1月20日 7時30分
東京高等裁判所で予定されている2つの民事訴訟の判決が、日本の原子力行政に根本的な見直しを迫ることになるかもしれない。
2つの訴訟とは、事故を起こした東京電力・福島第一原子力発電所の事故で群馬県および千葉県に避難を余儀なくされた住民によるものだ。2017年3月の前橋地裁および同年9月の千葉地裁での一審判決を踏まえ、東京高裁で控訴審が争われてきた。それぞれ1月21日および2月19日に判決が予定されている(原告の数は群馬訴訟、千葉訴訟でそれぞれ37世帯91人、17世帯43人)。
先行した仙台高裁の訴訟では、東電のみならず安全対策に関する規制権限の行使を怠ったとしての国の損害賠償責任を認める判決が2020年9月30日に出されている。さらに今般、群馬および千葉訴訟の高裁判決で国の法的責任が認められた場合、「国は原発の規制のあり方について根本的に見直しを求められることになる」(仙台高裁で勝訴した「生業訴訟」原告弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士)といわれる。
ちなみに群馬訴訟の一審の前橋地裁判決では国の法的責任が認められた一方、千葉地裁判決では津波の予見可能性を認めたものの、有効な対策を取ることは難しかったとして国に法的責任はないとされた。
また、2020年12月には、大阪地裁で関西電力・大飯原発の原子炉設置変更許可の取り消しを命じる判決が出されており、原子力規制委員会による安全審査のあり方に裁判所がノーを突き付けた。大飯原発をめぐる訴訟では、耐震安全性に関する審査が新規制基準にのっとって実施されていないと判決で指摘された。
■責任を認めない国の姿勢のかたくなさ
国はすでに生業訴訟に関して最高裁判所への上告手続きをしているが、相次ぐ敗訴にもかかわらず原発事故の被害救済を棚上げして徹底抗戦した場合には世論の反発は必至だ。
菅政権の看板政策である「2050年カーボンニュートラル(脱炭素化)」では原発の最大限の活用に言及しているが、規制当局の信認が失われれば、原発の推進自体のつじつまが合わなくなる。
東京高裁において明らかになってきたのが、原発事故を防げなかったことへの責任を認めない国の姿勢のかたくなさだ。
原告の一人で、福島県いわき市から群馬県前橋市へ避難した丹治杉江さん(64歳)は、「今回の裁判を通じて、原発というものが、国民の生命と財産、暮らしを守る絶対的安全規制の下で建設されているのではないことが身にしみてわかった」と話す。
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