「強いドル」と言わなかったイエレン新財務長官 公聴会発言から真意と通貨政策を展望する

東洋経済オンライン / 2021年1月21日 7時50分

財務長官に就任予定のイエレン氏は「強いドル」とは言わなかったが……(写真:ロイター/Leah Millis)

1月19日、バイデン政権下で財務長官に就任する予定のイエレン氏に対する指名承認公聴会が開催された。イエレン氏は言わずと知れた前FRB(連邦準備制度理事会)議長である。公聴会の論点は多岐にわたったが、注目された為替市場に関して、イエレン氏はアメリカ財務長官の常套句である「強いドル」というフレーズを使わなかった。「アメリカ経済の長期的な強靭さと金融システムの安定性維持が、アメリカやそれ以外の国々にとって利益となる」との発言が「強いドル」への意向を含んでいると考えられなくもないが、直接的な言及はなかった。

■ドル安志向になったら、標的は人民元か

邪推を承知でいえば、政権移行に伴って「分断」ではなく「団結」を呼びかける以上、ドル安志向の強そうなトランプ支持者に配慮を示したのかもしれない。もっとも、「強いドル」との発言があったところでアテにはできない。後述するように「強いドル」と言いつつドル安を放置する「優雅なる無視(benign neglect)」は米国の通貨政策の十八番である。

公聴会全般をとおして中国に対する言及が目立ち、報道もこれを取り上げる向きが多い。イエレン元議長は例えば、中国を「最も重要な競争相手」と名指しした上で「不当廉売や貿易障壁、不平等な補助金、知的財産権の侵害、技術移転の強要など、中国の不公正な慣行はアメリカ企業の力を削いでいる」と直接的な批判を展開した。

「あらゆる手段を講じて対抗する」と財務省としての対応もちらつかせていることから、為替政策報告書のトーンにいかなる変化が見られるかなどに着目していきたい。仮に新財務長官の下でのアメリカが陰に陽にドル安志向を強めたとしても、そのあおりを最も受けそうなのは日本の円ではなく中国の人民元となる可能性が高まったと考えるべきだろうか。

2020年のドルの名目実効相場は4.1%ポイント下落したが、引き下げに最も寄与(シェアと上昇率で計算)したのは人民元の1.6%ポイント、次いでユーロの1.5%ポイントであり、日本円の寄与度は0.4%ポイントと大きく落ちている。

アメリカの通貨政策を振り返れば、「強いドル」を唱えつつも、眼前で進むドル安は静観するという局面が繰り返されてきた。こうした「優雅なる無視」と呼ばれる通貨政策の姿勢は、直近では世界金融危機直後の混乱期(2009年1月~2013年1月)であるガイトナー財務長官の時代が思い返される。

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