スーチー氏拘束、跋扈するアジアの「権威主義」 米バイデン政権の外交政策が試されている

東洋経済オンライン / 2021年2月4日 11時30分

ミャンマーで起きたクーデターに対し、タイでは抗議デモが起きた(写真:AP/アフロ)

一匹の妖怪が東南アジアを徘徊している。権威主義という妖怪が。

こんな時代錯誤のアナロジーが頭に浮かんだのは2月1日、3つの出来事が重なったからだ。

1つは、ミャンマーで軍部がアウンサンスーチー国家顧問らを拘束し、権力を掌握したクーデター。数日前からうわさは流れていたものの、「まさか」の暴挙である。

■東南アジアで加速する権威主義

2つ目は、同日終わったベトナムの共産党大会でグエン・フー・チョン書記長の続投が決まったことだ。トップの任期は2期10年までという党規破りの決定である。

そしてもう1つが、これも同じ日に中国が海警法を施行したことだ。同法は、中国が管轄する海域や島などに外国の組織や個人が設けた建造物などについて強制的に取り壊せるとする法律である。尖閣諸島周辺や南シナ海も対象としていると考えられる。

東南アジアの国々ではほかにも権威主義的な動きが加速している。内政上の事情はそれぞれだが、共通する外的要因は、アメリカの衰退と中国の膨張である。民主化や人権に無関心だったトランプ前大統領の姿勢が、各国の権力者に与えた影響も無視できない。

こうした状況にアメリカのバイデン新政権はどう向き合うのか。民主的な価値観を強く押し出せば、それに反発する国は中国との関係を深めていくと予想される。地域の安全保障環境もからみ、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を進めたい日本も難しい対応を迫られる。

ミャンマーの軍部はクーデターの理由として、スーチー氏が率いる与党・国民民主連盟(NLD)の圧勝に終わった2020年11月の選挙に不正があったとしている。国際選挙監視団が「おおむね問題はなく、正当」と認め、選挙管理委員会も軍の申し立てを却下しているにもかかわらず、である。

証拠を示さず選挙の不正を言い募る点でトランプ支持者と同類なのだが、武力を行使できるところに違いがある。

ミャンマーの軍部は2008年、自らの特権維持を定めた憲法を制定した。国会の4分の1の議席を軍の指名とする一方、改正には4分の3以上の賛成を必要とするなど、「不磨の大典」と呼ばれた。2011年の民政移管を受け、アメリカが経済制裁を解除したことで多くの外資がミャンマーに参入し、軍関連の企業も大きな恩恵を被ってきた。

こうした事情を考えると、諸外国の制裁復活が予測されるクーデターはありえないと思われていた。

■驚きのベトナム書記長人事

1990年の総選挙でNLDが圧勝したときも、軍は政権移譲を拒み、スーチー氏を自宅軟禁して民主化勢力を弾圧した。今回も、NLDの圧勝と、それを認めない軍の武力弾圧という30年前の絵柄が焼き直された形だ。

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