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「欧州から単身帰国」40代日本人男性の波乱人生 コロナ禍で仕事がすべてキャンセルになった

東洋経済オンライン / 2021年2月20日 21時0分

単身帰国してからもうすぐ丸1年。仕事はすべてキャンセル、海外にいる家族とも会えず……(写真:Fast&Slow/PIXTA)

日本において、夫妻の一方が外国人(いわゆる国際結婚)の婚姻件数は、毎年2万件ほどある。全体の婚姻数に占める割合は3%程度と高くないが、グローバル化が進むなか、国際結婚を身近に感じる人も少なくないのではないか。

ところがこのコロナ禍で国境をまたぐ移動が厳しく制限されるようになった。思いがけない苦難に直面している国際結婚カップルも少なくないかもしれない。そこで今回はある国際結婚カップルのケースを取り上げる。彼が国際結婚をするに至ったいきさつと、現在の生活とは?

「家族と離れ離れになってもうすぐ丸1年経っちゃうんですよね。オンラインで毎日会えても肉体的に離れているのってやっぱりつらいですね」

そう語るのは、日本と欧州のある国でアーティストとして活動するYutaさん(仮名、40代)です。Yutaさんは20年ほど前から、半年ごとに日本と欧州を行き来し、両国でショーやワークショップを行ってきました。

■「家族を養えない」と急きょ単身帰国

2019年の夏に東京でのリサイタルを終え、欧州に戻ってからステージでレギュラー出演をしていましたが、年が明けて少しするとコロナパンデミックで仕事はすべてキャンセルに。

2020年3月に海外のアーティストを連れて日本でリサイタルの予定もしていましたがこちらもすべてキャンセルになってしまいました。この頃Yutaさんの住む国では各州でロックダウンとなり外出は禁止。予約していた飛行機はすべてキャンセルになり、あるのは、飛ぶか飛ばないかわからない飛行機の当日チケットのみでした。

このままその国にいては家族を養っていけないと、急きょ単身帰国することを決め、当日チケットのキャンセル待ちを粘って、ようやく飛行機に乗り帰国。

日本に戻ってもショービジネスはすべてキャンセルとなり、手持ちの機材ででライブ配信サービスをスタートさせ、仕事の切り替えを図っています。

単身帰国してからもうすぐ丸1年となるYutaさん。海外にいる家族にはもう1年会えていません。

Yutaさんは12歳で単身欧州へ渡りました。

当時日本ではJリーグが発足しサッカー界が大いに沸いていた時代です。
三浦知良選手がブラジルへサッカー留学をしていたということも随分ニュースになり、海外留学にあこがれる若者が急増。Yutaさんもその1人でした。

TVで三浦知良選手のことを知り、自分も留学してみたい!という思いが次第に強くなり、母親に相談。母はすぐに了承し、知人を頼って留学の準備を進めてくれたそうです。

言葉が一言もわからない状態にもかかわらず、12歳のYutaさんは迷うことなく欧州のある小さな町へひとり飛び立っていきました。

■恋愛や高校中退を経て、就職のため日本へ帰国

その田舎町では当時アジア人を見たことがない人が多く、まるで“宇宙人”を見るような目で見られていたというYutaさん。サッカーは現地に行ってすぐに実力差をみせつけられて、早々にプロになる夢は諦めてしまったそうです。語学の勉強を重ね生活にも慣れてきた頃、中学の同級生Rosaさん(仮名)に恋をし、交際がスタート。

Rosaさんとは一度別れて、それぞれ青春を楽しんだ時期もありましたが、少しするとやっぱり惹かれ合い、また付き合うを繰り返していた恋人でした。

しかし18歳で成人(欧州の法律上)すると、周りの仲間はみんな就職をし自立した生活を送るようになります。自分だけ親の仕送りで生活をしていることを恥ずかしく思うようになったYutaさんは18歳になってすぐに高校を中退して日本へ帰国し、就職することを決めます。この頃、Rosaさんとは別れていたこともあって、もう欧州へは戻らないつもりで帰国を決めていました。

帰国したYutaさんは、あるホテルで欧州スタイルのショービジネスの企画があることを知り、語学力と知識を生かして就職。ステージ作りの担当責任者に大抜擢されました。そして自身が企画するステージへ出演したある男性外国人アーティストと出会ってYutaさんの人生は一転します。

すっかり魅せられたYutaさんは退職を決意し、アルバイトをしながらそのアーティストに師事することにしました。

ちょうどその頃、Yutaさんのもとへ一通の手紙が届きます。

差出人欄にはRosaさんの名前。中を開くと、Yutaさんとの楽しい思い出や、青春時代の甘酸っぱい思い出、今でも、いつでもYutaさんを想っているという内容がたくさん綴られていました。

Yutaさんはそれを読むと居ても立ってもいられなくなり、すぐにRosaさんのいる国へ会いに行きました。

Rosaさんと久々の再会を経て、やっぱりお互いに惹かれ合っていることを再認識し、離れ離れにはなるけれど、「また付き合おう」と、交際が再スタート。こうしてYutaさんの2拠点生活が始まりました。

25歳になる頃には、本格的にプロのアーティストとして活動をスタートし、海外でも自分の居場所が必要だということで、Rosaさんが住む町で家を購入。その後、Rosaさんが妊娠し、第一子が生まれ入籍しました。

■仕事観が妻と理解し合えず…

その数年後、第二子も生まれ、一時は家族全員で日本に住もうとしたこともありましたが、慣れ親しんだ町を離れて日本の学校へ行くのはいやだとお子さんが訴えたそうです。親のエゴにならないようにとまた欧州に戻り、Yutaさんはレギュラー出演の仕事を続けていましたが、「自分は外国人だから面白がってもらえてるだけだ。子どもの頃から現地の音楽を聴いて育った町の露店でパンツ売っている普通の人が何気なく歌って踊る姿のほうがよっぽどかっこよくて、泣けるくらい感動する。自分はアーティストの仕事を続けていいのだろうか」という葛藤があったといいます。

どんな状況でもRosaさんはYutaさんの考えを尊重し、見守ってくれていましたが、半年に1度は離れ離れの生活で育児にしっかり参加できないことも多々あり、家族との溝に悩むこともあったというYutaさん。

「もともと離れている生活にはお互い慣れていますし、妻の家族全員がすぐ近所に住んでいてよく一緒に食事するので僕も安心してます。アーティストという僕の職業もそうですが、妻はどんな状況も受け入れてくれるので夫婦げんかはほとんどないんですが、“仕事への向き合い方”だけはずっと理解し合えずにきたんです」と語るYutaさん。

「妻はずっと時給での仕事しかしてきてないので、“賃金=労働時間”という感覚が強い。ステージを作り上げるのに必要なアーティスト同士のコミュニケーションの時間は“ただの遊び”としか思ってもらえず、話し合っても毎回けんかになりました」

RosaさんはこれまでYutaさんの仕事には一切興味も持たず、関与もしてきませんでした。コンサートが近づくたびに夫婦関係に溝が深まる一方だったといいますが、コロナパンデミックが起き、欧州にいても、日本にいても、アーティストとしての仕事はこれまでどおりとはいかなくなった状況を知ったRosaさんの心の中で変化が起き始めます。

これまで趣味で続けてきたウェブサービスでの物販のスキルを使って何かYutaさんの助けになることはできないかと考えるようになりました。

夫の仕事に対して反対はしないものの、これまでたびたび不満を感じていたRosaさんですが、夫がどれだけ自分の世界を大切に思っているのかはしっかり理解していたのでしょう。大好きな夫から大切なものが奪われるのは見ていられなかったようです。

Rosaさんはかねて興味のあったウェブマーケティングの勉強をしながら、Yutaさんが現在手掛けるプロジェクトを世界に配信してはどうかと提案。積極的に仕事に関わるようになりました。

「仕事のことで20年間ずっとぶつかってきたけれど、今この状況になって、妻自身も好きなことを仕事にできていると楽しみながら取り組んでくれていますし、僕もとても頼りにしています。今は公私共によきパートナーとなっています。皮肉にもパンデミックが大きなきっかけになって以前より絆が深まっていると感じています」

■コロナで深まった家族の絆

現在、ビデオチャットで話す家族との時間が毎日の楽しみだというYutaさん。

離れていても、娘たちは「どんなことがあっても、なんでもOKだよ!」と大らかに父を応援してくれています。

「娘たちのほうが僕なんかよりずっと大人なんですよ。こんな状況でも応援してくれている娘たちには偉そうなことは言えないです。僕がちょっときつい言い方をすると、“パパ、そんな話し方をしたら相手が嫌な気持ちになっちゃうよ”なんて、僕が教えてもらうことのほうが多くなりましたね。僕も彼女たちを心から信じていますし、本当にいい子に育ってくれています。でもやっぱり肉体的に離れているのはつらいですね……」

昨年からコロナ離婚、コロナ婚とさまざまなカップルの事例をご紹介してきましたが、厳しい状況下でもそれぞれの夫婦のあり方、家族のあり方を模索し、困難を乗り越えようとする姿が、世間の悩める方々の参考になればと願います。

いずれにしても、1日でも早くこのようなご家族が再会できますように。

鈴木 まり:生活カウンセラー

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