熱狂なき「日経平均3万円」で警戒すべきこと コロナ収束期待だけでは説明できない高値の背景
東洋経済オンライン / 2021年2月23日 8時0分
その瞬間は呆気なく訪れた。2月15日、日経平均株価は約30年ぶりとなる3万円台に到達した。だが、市場の受け止めは熱狂に程遠かった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、日経平均は2020年3月に1万6358円まで下落した。その後、金融緩和と財政拡大により水準を回復。米国大統領選挙後から上昇ピッチを拡大した。今年に入るとコロナのワクチン接種が始まり、世界的な景況感の改善期待が高まった。日経平均は2月に入り一気に3万円の大台に乗せた。当日の東証1部の売買代金は2.6兆円と市場に高揚感は見られなかったが、バブル期の1990年以来の水準に、過熱感を指摘する声も出た。利益確定売りもあり、19日には一時3万円を割り込んだ。
東証1部全体のPER(株価収益率)は22.8倍(1月末)で、数年前までの10倍台より大幅に上昇している。PBR(株価純資産倍率)も過去の上限である1.3倍で、理論上の上値余地は小さい。実際、「株安」を見込む投資家は増えている。日経平均が1%下落すると、逆に2%値上がりするように設計されたETF(上場投資信託)である「日経ダブルインバース」の残高が、初の6億口に乗せている。
■「売らない買い手」が下支え
その割に株価が大きく下落しないのは、日本銀行のETF買いと、企業の自社株買いの存在が大きい。日経平均が3万円を超えてから、日銀のETF買いは行われていないが、相場の急落時には必ずといっていいほど買いが入ってきた。
企業の自社株買いも高水準が続いている。消却すれば発行済み株式数を減らせるため、EPS(1株当たり利益)を向上させROE(自己資本利益率)を押し上げる効果がある。高いROEは優良企業の証しであり、配当と並ぶ株主還元として投資家にも歓迎される。
日銀がいきなり売り攻勢に転じたり、企業が自社株買いをやめたりすることはまずあり得ない。大口の「売らない買い手」が株価の下支えになっているのだ。
では、今後の株価動向をどう見通せばよいか。
内外で分けてみると、米国ではバイデン政権が総額1.9兆ドルの追加経済対策を打ち出した。中国では3月5日から開催される全人代(全国人民代表大会)で成長戦略が示される見通しで、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しも上方修正された。
足元の日本企業の業績は回復基調が鮮明だ。2021年3月期企業の第3四半期決算では、トヨタ自動車などが上振れ着地して通期予想を引き上げた。企業の通期見通しにはまだ上振れの余地がある。来期も増益が続くならEPSが拡大して、日経平均3万円台でも割高感が小さくなる。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
日経平均は3日続いて下落、米株安を嫌気 利益確定売り
ロイター / 2021年2月19日 15時47分
-
午前の日経平均は3日続落、主力株の利食いで3万円下回る
ロイター / 2021年2月19日 12時20分
-
アップルカー思惑で上昇したマツダが急落! 日経平均株価は続落
LIMO / 2021年2月19日 8時5分
-
日経平均は続落、高値警戒感広がる 主力銘柄で利益確定先行
ロイター / 2021年2月18日 15時41分
-
「日経平均3万円は通過点」イケイケ相場の"不人気&後伸び銘柄"の見つけ方
プレジデントオンライン / 2021年2月15日 13時15分
ランキング
-
1電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか
東洋経済オンライン / 2021年2月24日 10時0分
-
2「予約ゼロから満席に」コロナ禍でも寿司屋経営をV字回復させた73歳大将の手法
プレジデントオンライン / 2021年2月21日 11時15分
-
3夫が墜落事故死。専業主婦からフジテレビ管理職になった私が「若者に伝えたいこと」
bizSPA!フレッシュ / 2021年2月24日 8時46分
-
4ゲームストップ騒動に重なるバブル崩壊の記憶 ブラックスワンか、それとも市場のカナリアか?
東洋経済オンライン / 2021年2月24日 11時0分
-
5Jフロント、津田沼・新所沢のパルコを閉店へ
ロイター / 2021年2月24日 15時57分