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「張り紙1枚」で交通の利便性は飛躍的に高まる 震災10年の津波被災地をたどる・福島いわき編

東洋経済オンライン / 2021年4月30日 8時30分

常磐線のいわき駅。JRの特急はもちろん、高速バス・路線バスが発着する地域の交通の結節点だ(筆者撮影)

2021年3月11日に、東日本大震災の発生から10年が経過した。ひとつの区切りではあるが、復興が終わったわけではない。公共交通機関についても、鉄道は一応の復旧が完了したが、沿線の状況を含めて”昔の通り”とはいかない。

これまで、被災した鉄道については運転再開まで詳細に取材してきた。津波に襲われた範囲は、南は千葉県から北は青森県まで非常に広い範囲に及ぶ。当然、鉄道がない地域もある。それゆえ、路線バスを含めて、できるだけ海に沿って公共交通機関を乗り継ぎ、現状を見てみようと思い立った。

■東北の玄関口から北上

最初は3月10日の朝、福島県の最南端に当たる、JR常磐線勿来(なこそ)駅からスタートした。「勿来の関」で知られる、東北の玄関口でもある。

駅に着くとすぐ、まず7時36分発の上り水戸行きが入ってきた。かなり乗り込む人がいる。県境を越えて茨城県側に通う通勤客だ。筆者が乗り込んだ7時42分発の下りいわき行きにも先客が多く、5両編成の席がさらっと埋まっている。一般的には県境を越えると経済圏は別々になるが、ここはそうではない。「縦割り」にならない経済振興施策が求められるだろう。

発車すると、右手の車窓には勿来火力発電所が見えた。原子力発電所が使えない分、電力需要を支えている発電所の1つだ。震災では全発電機が被災したそうだが、6月以降に順次、復旧にこぎつけている。

常磐線は海からやや離れたところを走るが、海沿いにバス路線はないので、泉まで直行。7時54分着。

泉は優しげな駅名だが、常磐線の全特急が停車する主要駅で、工業地帯であるいわき市小名浜への玄関口だ。いわき市を中心に路線網を広げる、新常磐交通のバスターミナルが駅前にあり、朝は周辺の高校へ向けて直行バスが次々に出て行く。

泉駅前―小名浜方面のバスは1時間に1、2本はある。途中無停車でイオンモールいわき小名浜へ向かう直行バスも運転される。町の中心は支所入口バス停付近で、8時35分発の江名経由いわき駅行きに乗ったら、約10分で到着した。

「被災した鉄道を取材した」と言っても唯一、訪問できなかったのが福島臨海鉄道だ。1972年までは旅客営業も行っていたが、今は泉―小名浜間の貨物専業鉄道なので乗車のしようがなかった。けれども、小名浜地区も6mを超える津波に襲われており、小名浜駅を中心にこの鉄道も壊滅的な被害を受けている。運転再開は2012年2月1日で、約1年かかった。

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