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スギHD会長優先接種「上級国民批判」再びの紛糾 冷酷な階層が切実さを伴ってリアルに浮かぶ

東洋経済オンライン / 2021年5月12日 17時40分

「上級国民」と名指しされる人々の定義やイメージは馬鹿にできない(東洋経済オンライン編集部撮影)

「上級国民」疑惑がまたもや再燃している。今回は疑惑も何も特権的待遇そのものだ。

愛知県西尾市の近藤芳英副市長が、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関して、ドラッグストアチェーンを展開する「スギホールディングス」の杉浦広一会長とその妻が優先的に予約枠を確保できるよう担当部署に指示していたことが明らかになった。

■自治体への貢献度がワクチンの優先順位を決める?

5月11日の記者会見では、便宜を図った理由について近藤副市長は、「これまで同社からさまざまな支援を受けており、何らかの形でお返しすることができないかと考えていた」ことを明らかにした。これは裏を返せば、自治体への貢献度によってワクチンの優先順位が決まるという残酷な事実を物語っているともいえ、対象となる高齢者がにわかに「上級国民」とそれ以外に区分けされる印象を与えるには十分だった。

スギホールディングスが4月6日に発表した2021年2月期連結決算で売上高、純利益ともに過去最高となったニュースを覚えている者からすれば、ただでさえコロナ禍の影響で好業績を享受している立場でありながらワクチンの公平性を進んで破壊しようとする我利我利亡者に映ったかもしれない。

「上級国民」は、今やコロナ禍で進行する地獄絵図の中の重要指名手配犯と化している。一般国民のことなど歯牙にもかけず、おのれの利益と生存を最優先し、良心の呵責に苛まれることもない――そんな冷酷な階層がリアルなものとして、時には切実さを伴って感じ取られているのだ。

もともとは2015年を揺るがした2020年東京五輪のエンブレムの著作権侵害騒動において、原案が模倣ではないとする専門家の判断を踏まえ、デザイン委員会の理解は得られるものの、一般国民の理解を得ることは難しいという結論に至ったオリンピック組織委員会の回答がきっかけだった。

そのような常識から外れた政治家や専門家、官僚などを揶揄(やゆ)するパワーワードとして広まったことは偶然ではない。その後、2019年に起きた東池袋自動車暴走死傷事故の際に、罪を免れようとする特権階級の意味合いが強まり、コロナ禍では、PCR検査を優先的に受けられる政治家などを巡って、「上級国民」論は新しい階級社会の到来を告げる局面を迎えた。

そもそも五輪開催に向けて少なくとも1兆6400億円もの巨額の税金を湯水のごとく使っているにもかかわらず、国民が切実に必要としているコロナ禍における経済的支援には後ろ向きで、医療キャパシティの問題も根本的に解消されないままだ。そのために3度目の緊急事態宣言を発出せざるをえなくなり、多大な経済的損失、深刻な人的損失を招いてしまっている。

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