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コロナ禍で「日本の正規雇用」33万人も増えた訳 統計が示す「コロナに強い」業種と地域とは?

東洋経済オンライン / 2021年7月5日 13時0分

(写真:アン・デオール / PIXTA)

長引くコロナによって「日本の雇用環境」も厳しい状況が続いている。
厚生労働省は「コロナに起因する解雇者」が10万8121人(6月25日時点)に達したと発表した。また、帝国データバンクによると、コロナ関連倒産が2020年2月からの累計で1700社以上にのぼる。

しかし、コロナ禍の1年間における「雇用環境の変化」を3つの指標で読みとくと、意外な事実が浮かび上がった。

■コロナ禍で「正規」雇用者の数は増えている

まずは「労働力調査」(総務省)から、雇用の実態をコロナ前後で比較しよう。

コロナ禍の1年間で労働市場はどう変化したか
正規職員・従業員 非正規 完全失業者数
2019年度 3516万人 2163万人 162万人
2020年度 3549万人 2066万人 198万人

出所:労働力調査(総務省)基に筆者作成

コロナ禍の1年で完全失業者数が36万人増加した。「コロナ不況」の影響が顕著にあらわれている。就業者数の減少は宿泊業、飲食サービス業が37万人で最多。製造業は19万人減、卸売業、小売業が12万人減となっている。これまでも繰り返し報じられてきた失業の事実だが、人を相手にするサービス業への影響の深刻さを数字が示している。

そして非正規の職員・従業員は97万人減少しているが、これは明らかに業績悪化に伴う雇い止めなどの結果だろう。

意外なのは「正規」が33万人も増加した点である。完全失業者が198万人にのぼる一方で、なぜ、正規の職員・従業員が増えたのか。

正規の増加、内訳をみてみよう。

2020年度の正規雇用数の前年度比の増減
男性 女性
全体 -4万人 +36万人
うち15-64歳 -9万人 +36万人
うち65歳以上 +6万人 +1万人

出所: 労働力調査(総務省)基に筆者作成 注:表記数値は四捨五入後の数値

つまり、正規職員・従業員数増加の牽引役は、15-64歳の女性だった。では、15-64歳女性の正規がなぜ36万人も増えたのか。そのカギはコロナ禍の長期化にあった。

産業別の就業者数をみると、「医療福祉」が868万人で17万人(男女計)と最大の増加を示している。このうち自営と役員を除く女性の正規雇用者増加は12万人だった。

さらに、2021年5月分を見ると、「医療福祉」の就業者数は892万人にまで増え、前年同月比で51万人の大幅増となっている。このうち女性の正規雇用者は374万人で、前年同月の351万人よりも19万人増えているのだ。

コロナ禍の長期化で人手不足が顕著となった看護師や介護関連など、医療、介護現場で女性の正規雇用が大幅に増えたものとみられる。

有効求人倍率(求職者1人につき、何件の求人があるかを表す数値)のデータを見ると、2020年度は、医師・薬剤師等2.20倍、保健師、助産師、看護師1.99倍、医療技術者2.63倍など、医療関係は全体(職業計1.01倍)を大きく上回っている。逼迫する医療現場のニーズが、正規雇用を増やしたのだろう。

■2割の病院が「離職率2割超」

ただ、正規雇用の看護職員の離職率が20%を超える病院は21.2%(2019年度、日本看護協会調べ)にのぼり、また、人口10万人当たりの就業看護師数でみると、全国平均963.8人に対し、コロナ感染者数の多い東京は792.3人しかいない(2018年末現在、衛生行政報告例)。「夜勤などハードな勤務内容ゆえ慢性的に人手不足だったが、コロナで拍車がかかった。そこにワクチン接種の人材も必要となり、需給は逼迫している」(医療業界関係者)。

これは介護現場についても同じことが言える。介護サービス職の有効求人倍率は3.37倍で、全業種平均の0.94倍を大きく上回っている(2021年5月)。「医療福祉」分野で女性の正規雇用が増えた背景には、切実な人手不足状況があるのだ。

コロナによって正規雇用者の数が増加したことがわかったが、「賃金」はどのように変化したのだろうか。

都道府県別の賃金の状況を見てみよう。ここで用いるのは「零和2年 賃金構造基本統計調査」(厚労省)である。
なお、ここでいう「賃金」とは、毎年6月を基準とした給与額(残業代等を除く)を指す。

全国平均は30万7700円で、コロナ前の2019年の30万6000円よりも1700円(0.6%)アップした。都道府県別(男女計)の状況をみると、上位は次のとおり。

①東京都  37万3600円  
②神奈川県 33万5200円  
③大阪府  32万 400円  
④愛知県  31万4100円  
⑤京都府  31万 800円  

全国計を上回ったのはこの5都府県のみである。なお、2019年比でプラスとなったのは、この中では京都のみである。

下位は以下のとおり。

㊼青森県 24万 500円  
㊻岩手県 24万5900円  
㊺秋田県 24万6700円  
㊹宮崎県 24万8500円  
㊸山形県 25万1900円  

最も多い東京都と、最も少ない青森県では13万3100円もの開きがあり、その格差は1.55倍となっている。ただ、下位5県はいずれも2019年比で上昇。格差は若干だが縮小している。

■東京の有効求人倍率はコロナで大きく低下

求人状況はどうなっているだろうか。2020年4月の全国平均は1.30倍だったが、2021年4月は1.09倍にまで低下した。都道府県別の状況も同じだが、21年4月の上位は下記のとおり。

① 福井県 1.77 
② 岡山県 1.42 
② 島根県 1.42 
④ 富山県 1.38 
⑤ 香川県 1.35 
⑤ 石川県 1.35 
⑤ 秋田県 1.35 

有効求人倍率で見ると、地方が大健闘している。福井県は地場産業の眼鏡産業をはじめ繊維、電子・デバイスなど製造工場が多く、恒常的に有効求人倍率が高い県である。

一方、大都市への通勤者が多い周辺県の数値は概して低めだ。

㊼沖縄県  0.71 
㊻神奈川県 0.76 
㊺千葉県  0.85 
㊹滋賀県  0.91
㊸兵庫県  0.93

ちなみに東京都は1.14。全国平均を何とか上回ったが、前年の1.69に比べ大幅にダウンした。

産業別の賃金格差もコロナ前後で拡大している。コロナ前の2019年とコロナ禍の2020年で男性の業種別賃金を比較してみた。

2020年、最多は金融業・保険業の47万9200円で、最少は宿泊業、飲食サービス業の27万8200円だった。前者は前年比で3.8%のプラスとなった一方、後者は0.18%のマイナスとなり、両者の差は拡大した。

コロナ前後で「業種別」賃金はどう変化したか
2019年 2020年
1位 金融業、保険業 46万1700円 47万9200円
2位 教育、学習支援業 45万1900円 42万9400円
3位 学術研究、専門・技術サービス業 41万6100円 42万0900円
12位 宿泊業、飲食サービス業 27万8700円 27万8200円

出所: 「零和2年 賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)基に筆者作成

宿泊業、飲食業は、コロナ前から賃金面でも低い水準だったが、コロナが追い打ちとなった。

■コロナが変えた「雇用のあり方」

雇用環境をめぐっては男女間、正規・非正規間、業種間などさまざまな形で格差がある。コロナがそれら格差の改善の契機となるのか、さらなる深刻化を招いてしまうのか。

個人の働き方といったミクロな視点から、業種別・地域別の人材需要といったマクロな視点まで、「雇用のあり方」が大きく変化する中で、現状を踏まえた「格差是正」政策の必要性が高まっている。

山田 稔:ジャーナリスト

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