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日本には高すぎる「一つの中国」を崩すハードル 日本政府高官の台湾傾斜発言はかなり危うい

東洋経済オンライン / 2021年7月15日 8時30分

日本政府高官から台湾を「国家」としてみる発言が続いている。中国が主張する「1つの中国」との整合性はどうなのか(写真・2021 Bloomberg Finance LP)

高まる嫌中世論の裏返しとして、メディアや世論で台湾への情緒的傾斜が目立ち、菅義偉政権の高官が台湾を「国家」扱いするなど「失言」も相次ぐ。日本が中国と国交正常化した際の共同声明は、台湾の中国返還を事実上認めたことを知る人は少ない。台湾民主化を理由に日本の「一つの中国」政策の見直しを求める声もあるが、その壁は固くハードルは高い。政府高官の「失言」は、揺らぐ日中関係をさらに動揺させ、「衰退ニッポン」に何の利益ももたらさないだろう。

2022年は、田中角栄首相が1972年に訪中し周恩来・中国首相と国交正常化共同声明に調印してから半世紀となる節目である。当時、日本とアメリカは台湾の「中華民国」政府と国交があり、台湾は、対中正常化の最大の障害だった。そして今も台湾問題は、日米と中国との対立・衝突の火種になっている。日本の「一つの中国」政策はいったいどのように確立され、台湾問題はどう扱われてきたのか。

■日中共同声明に込められた「ポツダム宣言」

1972年の日中共同声明の第2項は、日本政府は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と規定し、台湾問題の最大のポイントとなる第3項では「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と書いた。

「台湾独立」をはじめ「一中一台」「二つの中国」に反対する中国政府は、「一つの中国」を「政策」ではなく「原則」と表記し、日中関係の「政治的基礎」として日本側に厳守を求めてきた。中国の「原則」は(1)世界にはただ一つの中国しかない、(2)台湾は中国の不可分の一部、(3)中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府、という主張から成る。

中国の「一つの中国」原則に対し、外務省など日本側は第3項後半の前段で、中国政府の「立場を十分理解し、尊重」すると表現したのは、「台湾は中国の一部」という中国側の主張を「全面的に認めたわけではない」という主張を担保するためだ。「一つの中国」政策の見直しを主張する勢力や台湾も、この立場をとっている。

しかし、それに続いて「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持」との表記が追加されている。それはいったい何を意味するのか。第8項の中身は「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルべク」という規定。1943年11月のカイロ宣言はアメリカ、イギリス、中国の3カ国のカイロ会談を受け、日本が奪った領土の返還を記述する内容。台湾については「(日本が盗取した)台湾と澎湖諸島」の中国への返還を明記した。

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