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「文理問わず教養教育が重要」池上彰が語る大学論 学びの意欲をどうかき立てていくか求められる

東洋経済オンライン / 2021年7月22日 11時30分

池上彰氏に大学で教養を学ぶ意義、そしてこれからの大学教育の姿について聞いた(撮影:ヒダキトモコ)

2012年から東京工業大学で理系学生に教養科目を教えてきたジャーナリストの池上彰氏。2016年3月末にリベラルアーツセンター教授を定年退官した後もリベラルアーツ研究教育院の特命教授として東工大で学生の指導を続けている。東工大以外にも複数の大学で教鞭を執る池上氏に、大学で教養を学ぶ意義やこれからの大学教育はどうあるべきか、聞いた。

■技術者や研究者になったときに必要なモラルを教える

──理系の学生に教養を教える重要性をどう考えていますか。

東工大では現代史を教えている。初めの頃、学生たちは歴史を単なる暗記科目と捉えている節があった。「この出来事があったから、こうなった」という因果関係、あるいは物理でいう作用と反作用みたいな言い方をすると、理系の学生にストンと理解してもらえる。歴史は人間の営みだから本質は変わらない、ということを、かなり理解してもらえるようになった。

例えば、小・中学校では四日市ぜんそく、イタイイタイ病、水俣病、新潟水俣病という四大公害病があると習う。だが、東工大では技術者や研究者になったときに必要なモラルを考えさせる。

学生たちにはこういう言い方をしている。「君たちが就職をして派遣された海外の工場から排水が出ていて、下流でおかしな病気が発生したときどうする? 原因究明に乗り出すか、知らん顔するか?」すると、急に教室が静まり返る。

「勇気を持って告発をすることで多くの人々の命を助けることができるかもしれない。だけど、その企業の中での君の将来は失われてしまうかもしれない」と問いかける。公害病は歴史的な事実として勉強する対象だった。ところが突然、自分の生き方の問題になる。

卒業後、自分がしている研究や仕事は社会的にどんな意味があるのだろう。後で振り返って「自分はいい仕事をしてよく生きてきたな」と思うのか、「あのとき勇気を出して、ああしておけばよかった」と後悔するのか、「それはこれからの君たちの生き方の問題だよ」と話す。大学では専門知識を学ぶのはもちろん、同時によき社会人として育っていかなければいけない。そのためのお手伝いができればと思っている。

──教養を学ぶようになってから学生は変化しましたか。

授業後に、東工大生からもらう感想には、「専門のことばかり考えていて視野が狭かった。世の中のことを考えていかなければ」「さらにこういうことを勉強するにはどうしたらいいでしょうか」といった内容がくるようになった。

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